「親が脳卒中の後遺症で、顔の片側が動かない」
「ベル麻痺と診断された。マッサージって自分でやっていいの?」
「温めるべき?冷やすべき?情報がバラバラで分からない」

そんなふうに検索して、この記事にたどり着いた方へ。

私は うめあかり 、急性期病院でST9年勤務後、現在もリハ特化型デイサービスで 言語聴覚士として勤務中 です。

顔の麻痺は、 原因によってマッサージの方法も注意点も大きく違います 。それを知らずに自己流でやってしまうと、 「後遺症(病的共同運動)を悪化させる」 ことも珍しくありません。

この記事では、 中枢性と末梢性の違い・自宅マッサージのやり方・温熱とアイシングどっち? を、公的ガイドラインと現場視点で整理してお伝えします。

※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の治療や対応については、必ず主治医・耳鼻咽喉科・形成外科・リハ科などの専門医にご相談ください。

【冒頭3行】こんな声に答えます

先に結論からお伝えしますね。

  • 顔の麻痺は「中枢性」と「末梢性」の2タイプ。リハ方法もマッサージの注意点も違う
  • 基本は「温熱」推奨(蒸しタオル5〜10分×1日2回)。アイシングは現行の標準治療では推奨されていない
  • 家庭用低周波・EMSは絶対NG 。病的共同運動を悪化させるため、自己判断で電気刺激しないこと

「強く揉めば治る」と思って一生懸命やってしまう方が、本当に多いんです。 でも顔面麻痺は、 「強くやらない」「小さく動かす」が原則 。順番にお伝えしていきますね。

顔の麻痺は2種類ある|中枢性と末梢性の違い

中枢性と末梢性の顔面神経麻痺の違い 比較図解

「顔面麻痺」とひとことで言っても、 原因によって大きく2つに分かれます

💡 顔面神経って?:顔の表情筋(額・目の周り・頬・口)を動かす神経のこと。脳から出て、耳の中を通り、顔の筋肉に枝分かれします。この経路のどこで障害が起きるかで、症状の出方が全然違うんです。

中枢性顔面神経麻痺

  • 原因:脳卒中(脳梗塞・脳出血)、脳腫瘍、外傷など、 大脳から脳幹(顔面神経核より中枢側)の障害
  • 症状:顔の 下半分のみ が麻痺する(頬・口角が動きにくい)
  • 特徴:額のシワは寄せられる、目もギュッと閉じられる
  • 多くの場合、 手足の麻痺・構音障害・嚥下障害を伴う ことが多い

末梢性顔面神経麻痺

  • 原因:ベル麻痺、ハント症候群(帯状疱疹ウイルス)、外傷、中耳炎、腫瘍など、 神経そのものの障害
  • 症状:顔 全体 が片側だけ動かない
  • 特徴:額のシワが寄せられない、目が完全に閉じられない(兎眼)、口から水がこぼれる
  • 味覚障害・聴覚過敏・涙が出にくいなど、 神経の障害部位によって随伴症状 が異なる

なぜ「額の動き」で見分けられるの?(解剖学の話)

💡 ざっくり言うと:額や目の周りの筋肉は、 左右両方の脳から信号 をもらっています(両側支配)。でも頬・口角は 反対側の脳からだけ 信号をもらいます(対側支配)。

つまり、片側の脳が壊れても、額は反対側の脳からも信号を受けられるので動きが残ります。 一方、神経そのものが切れる末梢性では、 その側の顔全部が動かなくなる わけです。

これが、ベッドサイドで「中枢性か末梢性か」を見分けるカギになります。

出典:

見分け方|「額が動くか」の3点チェック

額が動くかどうか3点チェックの図解

ご家族でも、簡単にチェックできるポイントが 3つ あります。

チェック①:額にシワを寄せる

「眉を上げてください」と声かけして、 額にシワが寄るかどうか を見ます。

  • シワが寄る → 中枢性の可能性
  • シワが寄らない → 末梢性の可能性

チェック②:目をギュッと閉じる

「目をきつく閉じてください」と伝えて、 まぶたが完全に閉じるかどうか を見ます。

  • しっかり閉じられる → 中枢性の可能性
  • 完全に閉じられない(白目が見える) → 末梢性の可能性

チェック③:口角を上げる

「イーって笑ってください」と声かけして、 左右の口角の上がり方 を比べます。

  • どちらも口角の動きは麻痺側で悪い → これだけでは判別不能
  • 上の①②と合わせて判断する

💡 大事なこと:このチェックは、あくまで 「目安」 です。「中枢性かも?」と思ったら、 脳卒中の可能性があるため、すぐに救急受診 が必要。「末梢性かも?」も、 発症から72時間以内のステロイド投与が予後を左右する ので、早めに耳鼻科か神経内科へ。

出典:

リハビリ方法はどう違う?中枢性と末梢性

中枢性と末梢性で、 リハビリの考え方も大きく違います

中枢性(脳卒中後)の場合

  • 主軸は「脳の回復に伴う麻痺の改善」
  • マッサージは補助的な役割(拘縮・浮腫の予防)
  • 嚥下障害・構音障害があれば、 言語聴覚士(ST)が並行して介入
  • 表情筋単独より、 全身のリハ(PT・OT)に組み込まれる ことが多い

私のような言語聴覚士は、 「食べる・話す」に関わる顔面リハ をメインで担当します。

末梢性(ベル麻痺・ハント症候群)の場合

末梢性のリハで一番大事なのは、 「筋力強化が目的ではない」 ということ。

ここからは、 時期別のリハ目的 を整理しますね。

  • 🩹 急性期(発症〜2週間):神経を休ませる時期。 強い随意運動はしない 。温熱と ソフトなマッサージ で血流を保つ
  • 🌱 回復期(数週間〜数ヶ月):鏡を見ながら表情筋を 「小さく・ゆっくり」 動かす訓練(ミラーバイオフィードバック)
  • 🍃 慢性期(後遺症期):拘縮・病的共同運動の悪化防止が主。必要に応じて ボツリヌス毒素治療 を併用

💡 病的共同運動って?:目を閉じると口が一緒に動く、口を動かすと目が一緒に閉じる、などの 「意図しない筋肉の連動」 のこと。末梢性麻痺の後遺症としていちばん厄介な症状です。

出典:

【最重要】温熱とアイシング、どっちが正解?

ここが、多くの方が いちばん迷うポイント です。

結論からお伝えしますね。

  • 基本は「温熱」 (日本顔面神経学会推奨)
  • アイシング(冷やす)は、現行の標準治療では推奨されていない

「捻挫や打撲は冷やすのが基本」というイメージから、 「顔面麻痺も冷やすのかな?」と思いがち ですが、 顔面神経麻痺は別物 。順を追って説明しますね。

なぜ「温める」が基本なのか

温熱には、以下の効果があるとされています。

  • 🌡 血流の改善:神経の回復を促す栄養が届きやすくなる
  • 🌡 筋肉のこわばりをほぐす:拘縮の予防
  • 🌡 マッサージの前段階として有効:温めてからのほうが筋肉が動かしやすい

日本顔面神経学会のQ&Aでも、 「蒸しタオルで温めるとよい」 と記載されています。

蒸しタオルの具体的なやり方

  • 蒸しタオルを 熱すぎない温度(やけどしない程度)で
  • 1回5〜10分、1日2回 程度
  • 麻痺側の 頬から耳の前 あたりに当てる
  • 温熱 → そのままマッサージ → 表情筋訓練、の流れがやりやすい

温熱を「避けるべき」3つのケース

ただし、 温熱が逆効果になる場面 もあります。

  • ⚠️ ハント症候群の急性期で、皮膚に水疱・発赤がある時 → 炎症を悪化させる可能性あり。皮膚科の指示に従う
  • ⚠️ 糖尿病などで知覚障害がある時 → やけどに気づきにくい
  • ⚠️ 局所が熱を持って腫れている時 → 炎症の極期は温めない

迷ったら、 主治医に「温めていいですか?」と確認 してくださいね。

アイシングが推奨されていない理由

「ベル麻痺で冷却する」という情報を見かけることがありますが、 顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版 でも、アイシングは推奨治療として挙げられていません。

💡 要するに:冷やしても 神経の回復を早めるエビデンスがなく 、むしろ血流を悪くする可能性も指摘されています。標準治療は 「温める」 と覚えておいて大丈夫です。

出典:

自宅でできる顔面マッサージのやり方

額のマッサージ イラスト

目周りのマッサージ イラスト

頬のマッサージ イラスト

口角のマッサージ イラスト

顎のマッサージ イラスト

自宅マッサージの順番 額→目→頬→口角→顎の図解

ここからは、 日本顔面神経学会が推奨している基本手技 に沿って、自宅でできるマッサージをお伝えします。

使う指は「3本」

人差し指・中指・薬指の 3本の指の腹 を使います。

  • 親指は使わない(力が入りすぎるため)
  • 1本指でゴリゴリ押すのもNG
  • 手のひら全体でもなく、3本指の腹で「面」で当てる

圧の強さは「物足りないくらい軽く」

これがいちばん大事なポイントです。

  • ❌ ぐっと押し込む
  • ❌ 強く揉む
  • ❌ 引っ張る
  • 「物足りない」と感じるくらい、軽く触れる

「もっと力を入れたほうが効きそう」と思っても、 顔面麻痺では強い刺激が病的共同運動を悪化させます 。優しく、優しく。

動かし方は「縦・横・丸を描く」

麻痺側のほおに3本指を添えて、

  • に上下に10回
  • に左右に10回
  • 丸を描く ように10回

これを基本セットにします。

順番(一例)

ステップを整理すると、こんな流れです。

  1. 🌡 蒸しタオルで温める(5〜10分)
  2. 🤲 マッサージ:額 → 目の周り → 頬 → 口角 → 顎 の順に、やさしく
  3. 🪞 鏡を見ながら表情筋訓練:「小さく・ゆっくり」が原則

頻度の目安

  • 1日10分、3セット 程度
  • 朝・昼・寝る前など、生活リズムに組み込みやすい時間に
  • 痛みが出る範囲では絶対にやらない

出典:

やってはいけないこと・絶対NG

絶対にやってはいけない3つのこと 強いマッサージ・EMS・急性期温熱の禁止図解

ここは特に強調したいので、 「絶対にやらないでほしいこと」 をまとめます。

① 強いマッサージ・強く揉む・強く引っ張る

「顔面神経麻痺=筋力低下」と勘違いして、 力いっぱい揉んでしまう 方がいます。 でも、これは 完全に逆効果

強い刺激は 病的共同運動・顔面拘縮を悪化 させ、後遺症を残しやすくします。

② 力いっぱいの随意運動

「思いっきり目を閉じる」「思いっきり大笑いする」など、 大きく強い動き は禁忌です。

特に 急性期(発症〜2週間)は、強い随意運動を避ける こと。 回復期以降も、 「小さく・ゆっくり」 が原則です。

③ 家庭用低周波・EMS(電気刺激)は絶対NG

ここは知らない方が本当に多いのですが、 市販の低周波治療器・EMSは禁忌 です。

  • 神経の 迷入再生 を促してしまう
  • 病的共同運動・顔面拘縮を悪化 させる
  • 顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版でも、 従来の低周波電気刺激は推奨されていない

💡 注意:2023年版ガイドラインで「鍼治療」は弱く推奨に格上げされましたが、これは 専門家のもとで行う鍼 の話。家庭用の電気刺激機器とはまったくの別物です。自己判断で電気刺激を使うのは絶対にやめてくださいね。

④ 急性期の温熱(炎症が強い時期)

前述しましたが、 ハント症候群で水疱が活発な時 や、 局所に熱感・腫れが強い時 は温めません。皮膚科の指示に従いましょう。

⑤ 自己判断でリハビリを中止しない

ただし、 力任せの訓練を継続する のも逆効果。

専門家(耳鼻科・形成外科・リハビリ科・認定リハビリテーション指導士)の指導下で 進めるのがいちばん安心です。

出典:

表情筋トレーニング|鏡の前でできる動き

動きが少し戻ってきたら、 鏡を見ながら表情筋を動かす訓練(ミラーバイオフィードバック) を始めます。

原則は「小さく・ゆっくり」

  • ❌ 大きく動かす
  • ❌ 速く動かす
  • ❌ 「もっと頑張ろう」と力を入れる
  • 小さく、ゆっくり、左右対称を意識

訓練メニュー(例)

  • 額にシワを寄せる(眉を上げる)
  • 目を大きく開く
  • 目をやさしく閉じる(強く閉じない)
  • ゆっくりまばたき
  • 「イー」と歯を見せる
  • 口を「ウ」とすぼめる
  • 頬を膨らませる
  • ストロー吹き・口唇閉鎖の練習(STの専門領域)

病的共同運動の予防が最重要

ここがリハの 核心 です。

  • 目を閉じる時に、 口が一緒に動かない よう意識する
  • 口を動かす時に、 目が一緒に閉じない よう意識する

「まぶたと口を独立して動かす訓練」が、後遺症を防ぐカギになります。

出典:

2023年版ガイドラインで推奨に変わったこと

顔面神経麻痺の治療は、 2023年版のガイドライン で大きく変わった部分があります。 最新情報として、ここも触れておきますね。

① 鍼治療が「弱く推奨」に格上げ

従来は推奨されていなかった 鍼治療 が、2023年版で 「弱く推奨」 に格上げされました。

ただしこれは、 専門資格を持つ鍼灸師のもとで行う鍼 の話。 家庭用の電気刺激機器とは別物です。

② ボツリヌス毒素治療の推奨化

慢性期の 病的共同運動・顔面拘縮 に対して、 ボツリヌス毒素治療(ボトックス注射) が推奨されるようになりました。

「目を閉じると口が動く」「口を動かすと目が閉じる」などの後遺症で困っている方は、 耳鼻科や形成外科で相談 してみる価値があります。

③ 早期のステロイド投与の重要性が改めて強調

ベル麻痺・ハント症候群とも、 発症から72時間以内のステロイド投与 が予後を大きく左右することが、改めて明記されました。

「ちょっと顔が動きにくいかも?」と感じたら、 様子を見ずに、すぐに耳鼻科か神経内科を受診 してくださいね。

出典:

受診すべきタイミング

「いつ病院に行くべき?」も、家族が迷いやすいポイントです。

すぐに受診(救急対応含む)

  • 麻痺が 急に悪化 した
  • 麻痺と同時に、 手足の麻痺・ろれつが回らない・激しい頭痛 がある → 脳卒中の疑い
  • 耳の痛み・耳の中の水疱・難聴・めまい がある → ハント症候群の疑い

早めに受診(72時間以内)

  • 顔の動きが片側だけ悪い症状に気づいた時
  • 目が 完全に閉じられない (角膜障害の予防が必要)

経過観察中の受診

  • 数ヶ月経っても改善が見られない
  • 病的共同運動 (目を閉じると口が動くなど)が出てきた
  • 顔の ひきつれ・つっぱり感 が強くなってきた

出典:

ST・PT・OTそれぞれの役割

顔面麻痺のリハには、 複数のリハ専門職 が関わります。

ST(言語聴覚士)

  • 構音障害(しゃべりにくさ)・ 嚥下障害(飲み込みにくさ)のリハ
  • 口唇閉鎖訓練(口から水がこぼれる対策・ストロー吹き)
  • 脳卒中後の中枢性麻痺で嚥下・構音障害を伴う場合は、 STが中心的に介入

PT(理学療法士)

  • 脳卒中後の場合、 全身の運動機能 (座る・立つ・歩く)のリハと並行
  • 顔面の単独麻痺では、PTが中心になることは少ない

OT(作業療法士)

  • 上肢機能や日常生活動作 (食事・整容)の練習
  • 口唇閉鎖・嚥下と関連して関わる
  • 鏡を使った表情筋トレーニングの指導 を担うことも

認定リハビリテーション指導士

  • 日本顔面神経学会 が認定する、顔面神経麻痺に特化したリハの専門資格
  • 学会HPで 指導士のいる施設を検索 できる

出典:

【現役ST視点】私の勤務先で見ている顔面麻痺の方の話

ここで、 私が現役STとして関わっている事例 を、少しだけ書かせてください。 ※個人情報保護のため、年齢・状況は一部変更しています。

末梢性麻痺で通われている70代の男性

私の勤務先のリハ特化型デイで、 ベル麻痺の後遺症 がある70代の男性の方を担当することがあります。発症から数年経っていて、 病的共同運動と軽度の顔面拘縮 が残っている状態。

その方には、

  • 🌡 蒸しタオルで5分温める
  • 🤲 手袋を付けて素手でマッサージ(衛生面の配慮)
  • 🪞 鏡の前で「目を閉じる時に口が動かないように」訓練
  • 💬 口唇閉鎖訓練(ストローを軽く吸う)

を、毎週続けています。

「強くやらない」を徹底することの難しさ

ご本人もご家族も、 「もっと頑張れば動くようになるんじゃないか」 と思ってしまいがち。

でも顔面麻痺は、 「頑張りすぎ」が後遺症を悪化させる、ちょっと特殊な疾患 なんです。

  • ❌ 「もっと大きく口を動かして」
  • ❌ 「もっと強く目を閉じて」
  • 「小さく」「ゆっくり」「左右対称を意識して」

ここを、ご本人にもご家族にも繰り返し伝えながらリハを進めています。

温熱の使い方の現場感覚

蒸しタオルは、 電子レンジで30〜40秒温めたタオルをジップロックに入れて使う のが、衛生的にも温度管理的にもおすすめです。

「自宅で続ける時にも、この方法なら手間が少ないですよ」とお伝えすると、ご家族も取り入れやすいみたいです。

よくある質問(FAQ)

Q1. 顔面マッサージは、1日に何回やればいい?

日本顔面神経学会の推奨は 「1回10分、1日3セット」 が目安です。ただし、 痛みや疲労が出たらすぐにやめる こと。「やればやるほど良い」ではなく、 「無理のない範囲で、長く続ける」 が原則です。回復期は数週間〜数ヶ月かかるため、毎日少しずつコツコツが大事になります。

Q2. ベル麻痺と診断されました。自宅でマッサージしていい?

主治医に確認の上で、 発症から1〜2週間経った頃から ソフトなマッサージを始めるのが一般的です。 急性期(発症直後)は神経を休ませる時期 なので、強い刺激は避けます。皮膚に水疱や発赤がある時(ハント症候群の場合)は、皮膚科の指示に従ってくださいね。

Q3. ハント症候群とベル麻痺、マッサージの仕方は違う?

基本のマッサージ手技は同じですが、 ハント症候群は皮膚症状(水疱・発赤)がある急性期は温熱と接触を避ける のが安全です。水疱が落ち着いてから、ベル麻痺と同じソフトなマッサージに移行します。回復率はハント症候群のほうがやや低いと言われており、 長期的な後遺症対策(病的共同運動の予防) がより重要になります。

Q4. 家庭用の美顔器・EMS機器は使っていい?

絶対に使わないでください 。市販の低周波治療器・EMS機器は、 神経の迷入再生を促し、病的共同運動・顔面拘縮を悪化させる可能性 があります。顔面神経麻痺診療ガイドライン2023年版でも、家庭用の電気刺激は推奨されていません。「美顔目的の機器」も、顔面麻痺がある方には禁忌と考えてください。

Q5. マッサージは何ヶ月くらい続ければいい?

ベル麻痺の場合、 発症から3〜6ヶ月で回復することが多い とされていますが、後遺症が残った場合は 長期的なケアが必要 になります。「治る」を目標にするより、 「悪化させない・維持する」 を目標に、生活習慣として続けるのが現実的です。改善が止まったら、ボツリヌス毒素治療などの選択肢も主治医と相談してみてください。

Q6. 子どもがベル麻痺になりました。マッサージのやり方は大人と同じ?

基本の考え方は同じですが、 子どもは皮膚が薄く、神経も繊細 なため、 より優しく・短時間で 行うのが安心です。必ず 小児科または小児神経科 で診断を受け、リハの指導も専門医・専門STのもとで進めてください。家庭でのマッサージは「補助」の位置づけで、自己流に頼りすぎないようにしてくださいね。

Q7. 脳卒中後の中枢性麻痺と末梢性麻痺、両方ある場合は?

両方が同時に存在することもあります。その場合は、 より重い症状(中枢性なら脳のリハ、末梢性なら神経再生)に合わせた介入 が中心になり、リハ科・耳鼻科・形成外科の連携が必要になります。ご家族は 「主治医に診療科をまたいだ連携を確認する」 ことが大事。STは嚥下・構音障害がある場合に介入することが多いので、リハ計画の中で確認してみてください。

【記事下】より詳しい情報・関連記事

「もう少し顔面麻痺について深く知りたい」「他のリハ情報も読みたい」という方は、以下もよかったらどうぞ。

まとめ|「強くやらない」が顔面麻痺リハの鉄則

最後に、もう一度だけお伝えしたいこと。

  • 顔の麻痺は「中枢性(脳の障害)」と「末梢性(神経の障害)」の2タイプ
  • 見分けるカギは「額が動くかどうか」 。額が動けば中枢性、動かなければ末梢性の可能性
  • 基本は「温熱」(蒸しタオル5〜10分×1日2回)。アイシングは現行の標準治療では推奨されていない
  • 自宅マッサージは「3本指で・物足りないくらい軽く・縦横丸を描く」
  • 絶対NG:強いマッサージ/力いっぱいの随意運動/家庭用低周波・EMS/急性期の温熱
  • 2023年版ガイドラインで、鍼治療とボツリヌス毒素治療が推奨に格上げ
  • 迷ったら、 耳鼻咽喉科・形成外科・リハ科・認定リハビリテーション指導士 に相談を

顔面麻痺は、 「頑張りすぎが逆効果になる、ちょっと特殊なリハ」 です。

「もっと強くやれば治る」ではなく、 「優しく・小さく・長く続ける」 。これが、後遺症を残さないためのいちばんの近道だと、現場で何度も感じています。

ご家族の方は、 「頑張れ」より「ゆっくりでいいよ」 と声をかけてあげてくださいね。

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【参考にした情報】

※本記事は現役言語聴覚士(ST資格保有・臨床経験9年・現在はリハ特化型デイサービス勤務中)うめあかりが、公的データと現場経験を元にまとめた一般的な情報提供記事です。掲載情報は2026年5月時点のもので、個別の医療相談に代わるものではありません。実際の治療・リハビリは、必ず主治医・耳鼻咽喉科・形成外科・リハ科などの専門医にご相談ください。本記事の内容をもって生じたいかなる結果についても、責任を負いかねます。

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