「お母さん、最近すごく痩せた…」 「ごはんが食べられない、むせる、声もかすれてる」 「ケアマネに相談しても話が進まない」
そんな状況で、ご家族としてどうしていいか分からなくなっていませんか。
私自身、現役のSTとしてリハ特化型デイで働いていて、まさに今、同じ状況のご利用者を担当しています。 「このままで本当にいいの?」というご家族の不安、痛いほど分かるんです。
この記事では、在宅高齢者がVF・VEの外来検査を受ける方法、費用、ケアマネが動かない時の代替ルートを、現場のリアルと一緒にお伝えしますね。
【結論】在宅で嚥下機能が悪化したら、3つのルートがある
結論からお伝えします。
在宅で親御さんの嚥下機能(飲み込みの力)が落ちてきたら、家族が動けるルートは大きく3つです。
💡 嚥下機能って?:食べ物や飲み物を口から胃まで送り届ける力のこと。ここが落ちると、誤嚥(食べ物が間違って気管に入ること)や栄養不足のリスクが上がります。
- ルート1:かかりつけ医(主治医)に直接相談して、摂食嚥下外来へ紹介状を書いてもらう
- ルート2:地域包括支援センターに無料相談する
- ルート3:歯科医師会の口腔機能相談窓口を活用する
ケアマネ経由が必須だと思い込んでいる方が多いんですが、実は 主治医ルートが一番早い こともよくあります。
詳しくは後の章で1つずつ解説していきますね。
【現役ST体験】デイで出会った「明らかにマズい」状態
ここは私の現役STとしての体験を、正直に書かせてください。
今、私はリハ特化型デイで、ある利用者さんを担当しています。 体重がどんどん減っていて、活気もなく、ぱっと見ても「明らかにマズい」状態なんです。
ご家族から聞いた食事内容は、半熟卵の黄身と、栄養補助食品のエンシュアを少しだけ。 それだけで1日を過ごしているそうなんですね。
しかも鼻から食べ物が逆流することがあって、声もガラガラにかすれています。 これは栄養不足と嚥下機能低下のサインがそろってしまっているんです。
私はSTとして、デイのなかで反復唾液嚥下テスト(RSST)と頸部聴診(首に聴診器を当てて飲み込み音を聞く)を実施しました。
💡 RSSTって?:「30秒間で何回唾を飲み込めるか」を数える簡単なテスト。3回未満だと嚥下機能の低下が疑われます。
その結果、「これはVFかVEの精密検査を受けてほしい」と判断したんです。 ケアマネさんに情報提供書を出しました。
でも、ケアマネさんはなかなか動いてくれませんでした。 ご家族も「もう年だから仕方ない」と諦めモード。
私はSTとして「このままリハを続けても、栄養が足りなければ悪影響かも」という不安と、どうしようもない無力感を感じていました。
正直、「これがその人の寿命なのかな…」と思った瞬間もあったんです。 でも、諦めずにできることが、まだあるんですよね。 それを伝えたくて、この記事を書いています。
家族が見逃しがちな嚥下機能悪化の7つのサイン

まず、ご家族に知っておいてほしい「嚥下機能が落ちているサイン」を整理します。
毎日一緒にいると、変化に気づきにくいんですよね。 「年だから」で片付けてしまいがちな症状が、実は危険信号だったりします。
以下の7つのサインのうち、 2つ以上当てはまるなら早めに専門家へ相談 が安心です。
- 食事中によくむせる(特に水・お茶・汁物)
- 食事に時間がかかる(30分以上かかるようになった)
- 声がかすれる・ガラガラ声になる(食後特に)
- 痩せてきた(半年で5%以上の体重減少)
- 鼻から食べ物が逆流することがある
- 食欲が落ちて、食べる量が減った
- 微熱や肺炎を繰り返す(誤嚥性肺炎のサイン)
誤嚥性肺炎の詳しいサインは、別記事の誤嚥性肺炎の初期サイン7つで詳しく書いていますので、合わせて読んでみてくださいね。
ちなみに、私がデイで出会った利用者さんは、これら7つのうち5つが当てはまっていました。 こうなる前に気づけたら、もっと早く動けたのに…と悔やまれます。
デイサービスSTができること/できないこと

ここは家族にも知っておいてほしいポイントです。 「デイにSTがいるなら、何でもやってくれるんでしょ?」という誤解、すごく多いんです。
デイのSTが「できること」
私が今、デイで実施しているのは以下の評価と訓練です。
- RSST(反復唾液嚥下テスト):30秒で何回飲み込めるかチェック
- MWST(改訂水飲みテスト):少量の水を飲んでもらって嚥下評価
- フードテスト:実際の食べ物で評価
- 頸部聴診:首に聴診器を当てて飲み込み音を聞く
- 口腔機能評価:舌の動き・口唇の力など
- 間接訓練/直接訓練:嚥下体操や食べ方の指導
参照元:マイナビコメディカル 嚥下機能の評価法(RSST/MWST)
これらは介護保険下のデイで実施可能なんです。
デイのSTが「できないこと」
一方、デイサービスでは 絶対にできない検査 があります。
それが VF(嚥下造影検査)とVE(嚥下内視鏡検査) です。
💡 VF・VEって?:VFはバリウム入りの食べ物を飲んでもらってレントゲン動画で観察する検査。VEは細い内視鏡を鼻から入れて、のどの動きを直接見る検査。どちらも「飲み込みの実態」を客観的に評価できます。
VFとVEは 医療保険管轄の検査 なので、介護保険下のデイでは実施できないんですね。
つまり「精密な飲み込み評価が必要」と判断したら、外来の病院を紹介する流れになります。 ここに大きなハードルがあるんです。
リハ特化型デイで何ができるかは、リハ特化型デイサービスガイドで詳しく書いていますので、合わせて読んでみてくださいね。
VF・VE外来検査の費用と条件【2024年改定対応】

ここからは、VF・VE外来検査で 実際に窓口で払う金額 を中心に解説します。
VE(嚥下内視鏡検査)の自己負担額
VEの正式名称は「内視鏡下嚥下機能検査」です。
検査自体の自己負担額(目安):
- 1割負担:約 720円
- 2割負担:約 1,440円
- 3割負担:約 2,160円
これに初診料や処方料が加わるので、 実際の窓口負担は 1,500〜3,000円程度 が目安です。
💡 ざっくり言うと:医療点数720点(2024年改定・D298-2)です。1点=10円で、 1割・2割・3割の自己負担割合 に応じて支払う金額が決まります。
参照元:D298-2 内視鏡下嚥下機能検査(令和6年度改定)
VF(嚥下造影検査)の自己負担額
VFは単独点数がなく、複数の項目を合算します(透視診断+造影剤注入手技+撮影料+造影剤料)。
合算した自己負担額の 目安(医療機関により幅あり):
- 1割負担:約 数百〜2,000円
- 2割負担:約 1,000〜4,000円
- 3割負担:約 1,500〜6,000円
💡 ざっくり言うと:透視診断110点(E000)に加えて造影剤の量や撮影回数で点数が変わるので、医療機関や検査内容によって金額の幅があります。
参照元:E000 透視診断 算定ルール
自己負担割合の目安
- 1割負担:75歳以上の後期高齢者(一般所得)
- 2割負担:75歳以上で一定所得以上(年収約200万円以上の単身者など)
- 3割負担:現役並み所得者・75歳未満(一般)
ご家族のお父さま・お母さまが何割負担になるかは、 後期高齢者医療被保険者証 に記載されています。
受診の条件
外来でVF・VEを受けるには、以下の条件が一般的です。
- 完全予約制(飛び込みでは受けられない)
- 紹介状(診療情報提供書)が必須
- 家族の同席が原則
- 受診場所は リハビリテーション科・耳鼻咽喉科・歯科口腔外科 を持つ総合病院、または「摂食嚥下センター」「摂食嚥下外来」を標榜する病院
VFとVEの違いを病院ST視点で詳しく解説した記事もあります。気になる方はVFとVEの違いを病院ST視点で解説を合わせて読んでみてくださいね。
ケアマネが動かない時の3つの代替ルート

「ケアマネさんに相談したけど、話が進まない」 「VF・VEまで進む気配がない」
そんな時、ご家族として動ける代替ルートを3つ紹介します。
ルート1:主治医(かかりつけ医)に直接相談
実は 一番早いのがこのルート です。
主治医に「飲み込みの精密検査を受けたい」と伝えれば、摂食嚥下外来あての 紹介状(診療情報提供書) を書いてもらえます。 ケアマネ経由は必須ではないんですよ。
このとき、デイのSTから出してもらった情報提供書があれば、主治医も判断しやすくなります。 私もデイのSTとして、必要に応じて主治医あての文書を作っています。
ルート2:地域包括支援センター
65歳以上の方なら、地域包括支援センターで 無料相談 が可能です。
- 保健師・社会福祉士・主任ケアマネが在籍
- 医療機関との連携をサポート
- ケアマネ変更の相談 も受け付けてくれる
「今のケアマネさんと合わないかも…」と感じたら、地域包括に相談してみるのもひとつの手です。
ルート3:歯科医師会の口腔機能相談
意外と知られていないんですが、 歯科医師会の口腔機能相談 という窓口もあるんです。
歯科口腔外科では、嚥下機能評価や口腔ケアの相談ができる施設が増えています。 お住まいの都道府県の歯科医師会サイトで、口腔機能相談窓口を検索してみてくださいね。
それでも動かない時:訪問診療医
もし訪問診療を受けているなら、訪問診療医からの紹介もスムーズです。 在宅医同士の連携で、病院STや歯科医師の訪問につながることもあります。
【現実的選択】諦めずにできる3つの工夫
「もう何をしても良くならない気がする…」 「VFまでたどり着けない地域だし…」
そんな時、家庭でも工夫できることが3つあります。 私もデイで、利用者さんとご家族にお伝えしている内容です。
工夫1:安全な食事形態を見つける
飲み込みやすさは、食べ物の 形態(かたさ・とろみ) で大きく変わります。
- とろみ剤 を活用する(水分にとろみをつけると誤嚥しにくい)
- ペースト食・ミキサー食・ソフト食 を試す
- ゼリー食 から始めてみる
現役STとして現場でよく使っているのは、トロミアップエース、つるりんこ Quickly、ソフティアS あたりです。 家庭でも入手しやすく、扱いやすいんですよ。
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メイバランスMiniやクリミールなど、栄養補助食品との組み合わせもおすすめです。 体重減少が進んでいる方には、特に大事になります。
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とろみ剤の詳しい選び方は、とろみ剤おすすめ5選で書いていますので、合わせて読んでみてくださいね。
工夫2:安全な姿勢で食べる
姿勢は嚥下にものすごく影響します。
- ギャッジアップ角度は30〜60度 が目安(医師・STに相談)
- 頸部前屈姿勢(あごを軽く引く姿勢)で誤嚥を減らす
- 食後30分は座位を保つ(逆流予防)
ベッドで食べる場合、リクライニングの角度ひとつで誤嚥リスクが大きく変わります。 ここはぜひSTか医師に相談してみてくださいね。
工夫3:訪問リハ(訪問ST)の導入
デイだけで対応しきれない場合、 訪問リハ(訪問ST) を併用する選択肢があります。
- 自宅で食事の様子を直接みてもらえる
- 家族への指導もしやすい
- ケアマネに「訪問STを入れたい」と相談してみる
訪問STは介護保険でも医療保険でも導入可能なんです。 詳しい条件は地域差があるので、地域包括や訪問看護ステーションに相談してみてください。
【FAQ】よくある質問
ご家族からよく聞かれる質問をまとめておきますね。
Q1:紹介状は必要ですか?
A:ほとんどの摂食嚥下外来で 紹介状が必須 です。かかりつけ医に「摂食嚥下外来を受診したい」と伝えれば、診療情報提供書を書いてもらえます。
Q2:費用は実際いくらかかりますか?
A:VEだけなら 1割負担で約720円〜1,500円、VFを含めると 2,000〜5,000円程度 が目安です。初診料や処方料も加わるので、当日は5,000円程度を持参すると安心ですね。
Q3:地方でVF対応の病院がない時は?
A:VE(内視鏡)は耳鼻咽喉科でも実施できる場合が多いです。VFは透視装置が必要なので限定的ですが、最寄りの摂食嚥下障害認定看護師・認定士のいる病院に電話で直接確認 するのが現実的です。日本摂食嚥下リハビリテーション学会の認定士一覧PDFで地域の認定士数を確認できますよ。
Q4:訪問リハ(訪問ST)と並行できますか?
A:はい、可能です。VF・VEの結果をもとに、訪問STが家庭での食事支援を継続するという流れが理想的です。
Q5:家族だけで進めていいですか?
A:家族主導で動いて大丈夫です。ただし、 本人の同意とかかりつけ医との連携 は必ず取ってくださいね。本人が「もう食べたくない」と言っている場合は、その気持ちも大事にしながら進めるのが安心です。
Q6:「もう諦めるしかない」と感じた時に
A:私もデイのSTとして、何度もそう感じる場面に出会います。でも、 安全な食事形態と姿勢を見直すだけで、生活の質が変わることがある んです。完全に元に戻すことは難しくても、 「今より少しでも安全に食べられる工夫」 は必ずあります。一人で抱え込まず、ぜひ専門家に相談してくださいね。
【記事下CTA】ST転職・介護施設情報を本気で考える方へ
ここまで読んでくださった方の中には、 同じ悩みを持つST職の方 や、 在宅介護に限界を感じているご家族 もいらっしゃるかもしれません。
同じ悩みを持つST職の方へ
「自分の現場でも同じような利用者さんがいる」「もっと専門性の高い現場で働きたい」と感じたら、転職の選択肢も視野に入れてみてくださいね。 ST特化の転職サービスは無料で相談できるところが多いです。
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「自宅介護がもう限界…」と感じたら、施設入所も選択肢のひとつです。 介護施設の情報を比較できるサイトで、無理のない範囲でリサーチしてみるのも良いですよ。
(PR)まとめ
在宅で親御さんの嚥下機能が落ちてきた時、家族として動けるルートは思ったよりたくさんあります。
- 主治医に直接相談 が一番早いルート
- 地域包括支援センター は無料で頼れる窓口
- 歯科医師会の口腔機能相談 という選択肢も
- VF・VEの費用は 1割負担で数百〜数千円 が目安
- ケアマネが動かない時も、ご家族から動ける道はある
- 諦めずに「安全な食事形態」「姿勢」「訪問リハ」 で工夫できる
私自身、現役STとしてデイで「明らかにマズい」状態の利用者さんを担当しています。 無力感やもどかしさを感じる毎日ですが、それでも諦めずにできることが必ずあるんですよね。
この記事が、同じ状況で悩んでいるご家族や、現場で同じ思いを抱えているST仲間の方に届いたら嬉しいです。
困った時は、一人で抱え込まずに お問い合わせ からご連絡くださいね。
※本記事は私個人の経験と公開情報を元にしたものです。VF/VE検査・嚥下機能評価は施設・地域・改定年度によって変動します。具体的な医療判断は、ご自身の状況に合わせて主治医・嚥下障害認定看護師・摂食嚥下リハ学会認定士にご相談くださいね。本記事の内容をもって生じたいかなる結果についても、責任を負いかねます。


