「言語聴覚士でも、デイサービスの社長になれるの?」
「ST資格があれば、すぐ開業できる?」
「実際は何が大変なんだろう?」

結論からいうと、STもデイサービスを開業できます

ただし、ST資格だけで始められる仕事ではありません。法人設立、職員の採用、設備の準備、自治体の指定が必要です。

私は最近、STが経営するデイで働き始めました。ここで実際に社長になったSTを初めて見て、その行動力に驚いたんです。

この記事では、公的資料をもとに開業の全体像を整理しています。開業しない働き方も含めて、現役STの本音をできるだけ分かりやすくお伝えしますね。

※介護保険の指定基準は、地域や事業の種類で異なります。実際に計画する際は、物件契約や工事の前に自治体へ相談してください。

結論|STは社長になれる。でも「資格」より経営の準備が必要

STがデイサービスを開くための4条件。法人、職員、設備、自治体の指定が必要

STは、株式会社や合同会社などの法人を作り、デイサービスを運営できます。

また、STはデイサービスの「機能訓練指導員」になれる資格のひとつでもあります。これは、利用者の生活機能を支える訓練を担当する職種です。

ただし、STが一人いれば開業できるわけではありません

開業には、主に次の4つが必要です。

  • 事業を運営する法人
  • 基準を満たす職員
  • 食堂・訓練室などの設備
  • 自治体による事業者指定

介護保険法に基づくサービスを提供するには、指定権者となる自治体の審査を受けます。

💡 指定って何?:介護保険サービスを運営する条件を満たしているか、自治体に確認してもらう手続きです。

つまり、ST資格は強みになる。でも開業の中心は、資格よりも「組織を作り、運営を続けること」なんです。

デイで働くSTの実際を先に知りたい方は、病院STとデイサービスSTの違いも参考になります。

私が「STも社長になれるんだ」と驚いた理由

私は、STがデイを開業できること自体は知っていました。

でも、実際に開業した人に会ったのは初めてです。面接の時に社長に会って、「本当にSTが社長になれるんだ」と、その行動力に驚きました。

勤務先では、経営者がとても身近にいると感じます。病院時代より、考えていることや施設づくりの想いが伝わってくるんです。

雰囲気も自由で、積極的にITを使おうとする姿勢など、現代の価値観を取り入れているところが魅力だと感じています。

内装も、高齢者施設というよりカフェのようです。おしゃれで居心地がよく、私はこの特別感のある空間が好きです。

介護施設は、決められた形に合わせるだけではありません。経営者の色が、働き方や空間にそのまま出るんだと知りました。

この体験は、病院だけで働いていた頃には見えなかったことです。

一方で、私は社長になりたいとか、自分で開業したいとは思っていません。

今は、パートでのんびり働く形が自分に合っていると感じています。

やっぱり、自分の性格や価値観に合う働き方を選べることも大切だと思います。

病院の古い慣習がつらいSTへ|自分で職場を作る道もある

病院で働くこと自体が、苦しくなっているSTもいると思います。

「昔からこうしているから」と言われる。提案が通らず、前例に合わせることを求められる。

そんな古いしがらみや慣習が苦手な人にとって、開業はひとつの選択肢です。

経営者になれば、施設の特色や目指す方向を自分で決められます。

  • 新しい技術を試す
  • 働く時間やルールを見直す
  • 利用者が落ち着ける空間を作る
  • 職員同士が話しやすい文化を作る
  • STの専門性を施設の中心に置く

今の勤務先を見て、私は「施設はこんなに自由に作ることができるんだ」と気づきました。

AIを使うことも、カフェのような内装も、昔ながらの施設ではみられなかった形です。

病院が合わないからといって、STが合わないとは限りません。

STとして働くことが苦痛になった時、退職や転職だけでなく、自分が働きたい場所を自ら作る道もあると伝えたいです。

もちろん、病院がつらい勢いだけで開業するのはおすすめできません。経営者になれば、自由と一緒に大きな責任も引き受けます。

それでも「こんな世界もある」と知るだけで、気持ちが楽になるんじゃないかなと。

私自身は開業を選ばないけれど、自分で新しい文化を作りたい人には、向いている可能性があると思います。

開業にはどんな職員が必要?|STだけでは運営できない

デイサービスを支える管理者、生活相談員、看護職員、介護職員、機能訓練指導員。STも機能訓練指導員になれる

デイサービスでは、複数の役割を持つ職員が働きます。

主な職種は、次の5つです。

  • 管理者
  • 生活相談員
  • 看護職員
  • 介護職員
  • 機能訓練指導員

STは、この中の「機能訓練指導員」になれます。

機能訓練指導員は、利用者の心身の状態を確認します。そのうえで、日常生活に必要な機能を支える役割です。

STなら、ことば・飲み込み・認知面の視点を施設の強みにできますよね。

ただし、必要な人数は一律ではありません。利用定員、営業時間、通常規模型か地域密着型かなどで変わります。

💡 地域密着型通所介護とは?:原則として定員18人以下で、市町村が指定する小規模なデイサービスです。

職員が休んだ時にも基準を下回らない体制が必要です。採用できたら終わりではなく、勤務表を回し続ける必要があります。

だからこそ、開業前には自治体へ人員配置を必ず確認します。「この資格なら兼務できる」と自己判断するのは危険です。

臨床以外の制度や運営も学びたいSTには、動画で少しずつ学べる方法もあります。

PT・OT・ST向けオンラインセミナー「リハノメ」(PR)

デイサービス開業までの流れ|まず自治体へ相談

デイサービス開業までの7段階。需要調査から事業計画、法人、職員と物件、事前相談、指定申請、開業へ進む

開業の流れは、だいたい次の順番です。

  1. 地域の需要と競合を調べる
  2. サービス内容と定員を決める
  3. 事業計画と資金計画を作る
  4. 法人を設立する
  5. 職員と物件を確保する
  6. 自治体へ指定申請する
  7. 採用・営業・研修後に開業する

特に大切なのが、物件を決める前の自治体相談です。

食堂と機能訓練室の広さ、相談室、静養室などには基準があります。消防法や建築上の確認が必要になる場合もあります。

先に物件を借りてから「基準を満たせない」と分かると、やり直しになってしまいます。

申請期限や手数料は、自治体によって異なるため、早めの確認が必要です。

法人設立、採用、物件、工事、消防確認を考えると、もっと前から動く必要があります。日本政策金融公庫も、介護事業は準備項目が多いと説明しています。

開業を考えるなら、まず勤務先で運営の流れを見るのも現実的です。

病院とデイでは仕事内容がどう違う?現役STの体験談

実際に大変なのは何?|開業後に始まる5つの経営課題

デイサービス開業後の5つの課題。人材、利用者、送迎、記録と請求、資金繰り

私はまだ、勤務先の経営の大変さをすべて知っているわけではありません。

そこで、日本政策金融公庫などの公開情報から、介護事業で負担になりやすい点を調べました。

1.人材を集め、辞めない職場を作る

介護事業は、必要な有資格者をそろえないと始められません。

開業後も、利用者が増えれば採用が必要です。なので、職員が働き続けたいと思える雰囲気や待遇も求められます。

2.利用者に選ばれる

施設を作っただけでは、利用者は集まりません。

居宅介護支援事業所や地域包括支援センターに、施設の特徴を伝える活動が必要です。つまり営業が大事だということ。

STが経営するデイなら、ことばや飲み込みへの対応は大きなアピールポイントになります。

3.送迎を毎日安全に回す

デイサービスでは、送迎も大きな仕事です。

車両、運転手、送迎経路、欠席連絡、利用者の乗り降りなどを毎日調整します。事故を防ぐ仕組みも欠かせません。

4.記録・請求・制度変更に対応する

個別援助計画、実施記録、勤務表、請求など、経営側には多くの管理業務があります。

介護報酬や加算の仕組みも数年単位で変わります。

制度を学び直したい方は、専門家の講義を使うと全体像をつかみやすいです。

リハ職の学び直しに「リハノメ」を見る(PR)

5.入金までの資金繰りを守る

介護保険からの入金には時間がかかる一方で、給与や家賃は先に支払わなければなりません。

日本政策金融公庫は、介護・看護サービス業では人件費が先行し、資金繰りが課題になると指摘しています。

なお、同公庫が示す800万〜1,500万円という開業資金例は、訪問介護・訪問看護についての目安です。

デイサービスは物件や設備の条件が異なるため、そのままを当てはめることはできません。

開業費用は、定員、地域、改修、車両、人件費で大きく変わります。具体的な金額は、自治体と金融機関へ相談するのが安全です。

開業する人もしない人も|自分に合うSTの続け方を選べる

ここまで読むと、「私には無理かも」と感じる方もいると思います。

でも、開業しないから関係ないわけではありません。

経営の視点を知ると、勤務先の見え方が変わります。

  • なぜ記録が必要なのか
  • なぜ稼働率が大切なのか
  • なぜ送迎や加算を意識するのか
  • なぜ採用や職場の雰囲気が重要なのか

私自身は、性格的にも開業するよりパート勤務が合っています。

なので、責任を背負って施設を作る人をめっちゃ尊敬しています。

いまSTを続けるか迷っているひとは、「開業する」「管理職になる」「現場で働く」「家庭を優先する→復職する」。どれもST資格を生かす働き方です。

病院がつらい人には、特に伝えたいんです。

今いる組織の働き方が、STの世界のすべてではありません。転職して違う文化の施設を探す方法も、自分で施設を作る方法もあります。

年収や働き方の選択肢を整理したい方は、言語聴覚士の年収を上げる方法5つもどうぞ。

開業ではなく、自由な施設で働いてみたい方は、デイや訪問の求人を比べる方法もあります。

ST転職サイト3社を現役STが本音比較(PRを含みます)

FAQ|STのデイサービス開業でよくある疑問

ST資格だけで開業できますか?

いいえ。ST資格だけでは始められません。

原則として法人を作り、人員・設備・運営の基準を満たします。そのうえで自治体の指定を受ける必要があります。

STは管理者になれますか?

管理者の資格要件は、サービスの種類や自治体の基準を確認する必要があります。

ST資格があるから自動的に管理者になれる、という考え方ではありません。管理業務と他職種の兼務が可能かも、事前に自治体へ確認します。

STは機能訓練指導員になれますか?

はい。言語聴覚士は、機能訓練指導員になれる資格のひとつです。

ことば、飲み込み、認知面を見られることは、STが経営や運営に関わる強みになります。

開業前に何から始めればいいですか?

まず、どの地域で誰を支える施設にするかを考えます。

次に、指定を担当する自治体へ相談します。物件契約や大きな工事の前に相談するのが安心です。

まとめ|病院がつらくても、STの道は終わらない

STは、デイサービスを開業して社長になれます。

ただし、必要なのはST資格だけではありません。

  • 法人を設立する
  • 必要な職員をそろえる
  • 設備基準を満たす
  • 自治体の指定を受ける
  • 人材・利用者・資金を管理する

実際にSTの社長を見て、私はその行動力に驚きました。

自由な雰囲気や、AIを取り入れる姿勢、カフェのような内装。施設は、作る人の価値観でこんなに変わるんだと感じています。

私は今のところ、開業ではなくパート勤務を選びます。

でも「STは病院で働くだけではない」と知れたことは、大きな発見でした。

古いしがらみや慣習が苦手で、自分の価値観を形にしたい人には、開業が向いているかもしれません。

病院で働くことがつらくても、STの仕事そのものを諦めなくて大丈夫です。自分で働く世界を作る道もあります。

社長になる人も、現場を支える人も、自分の生活を大切にする人もいます。自分に合う形でSTを続けていけたら、それでいいと思います。


参考資料

著者:うめあかり(言語聴覚士9年・リハ特化型デイ勤務の現役ST・2児の母)

※本記事は2026年6月時点の公開情報と、筆者個人の勤務経験をもとにしています。指定基準や申請方法は地域・事業形態で異なります。開業の判断は、自治体、行政書士、税理士、金融機関などの専門家へご相談ください。

ご質問やご相談は、お問い合わせからどうぞ。