「言語聴覚士、辞めたい…」
夜中、子どもを寝かしつけたあと、スマホで「ST 辞めたい」と検索してしまったあなたへ。
まず、ひとことだけ。 辞めたいと思うのは、あなただけじゃない ということ。
私は、急性期病院で 9年間、言語聴覚士として働いてきました 。そして、いろいろ悩んだ末に辞めました。今は2児の母として、家のことをしながら、こうしてブログを書いている、ひとりの主婦です。
このページでは、 9年続けたSTを辞めた決定打・後悔したたった1つのこと・辞めてよかった3つのこと・お金の話まで、全部正直に書きます 。
私の話が、いま迷っているあなたの心を、少しでも軽くできたらうれしいです。
※本記事は私個人の体験と意見をまとめたものです。すべての言語聴覚士の方に当てはまるものではありません。退職や転職の判断は、ご自身の状況に合わせて慎重になさってくださいね。
結論|9年続けた言語聴覚士を辞めた、いまの正直な気持ち

先に結論からお伝えしますね。
- 後悔していることは、たった1つだけ
- でも、 辞めてよかったと思うことは3つ あります
- お金の不安は、 事前にシミュレーションしたから 、想像していたより怖くなかった
- 「9年も続けたのに、もったいなくない?」という気持ちは、正直ありました。でも、いまは 辞めて正解だった と思っています
私は、決して「STなんて辞めた方がいい」とは思っていません。 9年間、本当にやりがいのある仕事でしたし、 ST資格を取ったことを、一度も後悔していません 。
ただ、 「いまの私と家族にとって、続けるのは無理だった」 。それだけのことです。
ここからは、その理由を、できるだけ正直に書いていきますね。
私が言語聴覚士を9年続けて、辞めた決定打
よく「決定打は何でしたか?」と聞かれるんですが、 正直に言うと、これといった決定打はありません 。
ただ複数の理由が、 じわじわと重なっていった 結果、辞めるという選択に至りました。順番に書いていきますね。
理由1|夫の転勤が決まったこと
いちばん大きかったのは、 夫の転勤 でした。
仕事を続けるなら、 夫は単身赴任で私は平日ワンオペ+フル勤務 。
「やれないことはないかも」と一瞬考えました。でも、冷静に1日をシミュレーションしたら、 私には無理だ と分かったんです。
朝5時起き → 子どもの支度 → 保育園送り → 通勤 → 急性期で1日リハビリ → 残業 → お迎え → 夕飯 → お風呂 → 寝かしつけ → 残った家事…。
考えただけで、 疲れ果てている未来が見えました 。
理由2|1人目の育休復帰で、もう経験していた
実は、私には 1人目を出産後、育休明けで復帰した経験 があります。
そのときの記憶が、ずっと残っていて。
正直にいうと、あの頃の私は、 余裕がなくて、子どもに対してイライラして、あたってしまうこともありました 。
仕事も中途半端、家事も中途半端、子どもにも優しくできない。 夜、寝顔を見て 「ごめんね」 と泣いた日が、1回や2回じゃなかったんです。
「2人目が生まれて、また同じ毎日になるのは、もうしんどい」。 そう思ったのが、決定打の2つ目でした。
理由3|2人目妊娠中で、体力が限界だった
ちょうど辞めるかどうか考えていた時期、 私は2人目を妊娠中 でした。
つわり、寝不足、通勤、急性期の現場の慌ただしさ。 「あと数ヶ月、なんとか…」と踏ん張れなくはなかったかもしれません。でも、 お腹の子に申し訳ない 気持ちが日に日に強くなりました。
「人生100年時代」とよく言われますよね。 そう考えたとき、 「これから先のたった数年だけは、子どもを最優先にしたい」 という気持ちが、自分の中ではっきり固まりました。
一番きつかった瞬間|嚥下評価のプレッシャー
ここからは、もう少し業界寄りの話を書きます。 同業のSTさんが読んだら、 「分かる…」 と思ってもらえるかもしれません。
9年やってきて、 一番心理的にきつかったのは、嚥下評価の判断 でした。
💡 嚥下評価って何?:飲み込む力(嚥下機能)が、いまどれくらい残っているかを評価して、「この方は何を、どれくらい、どうやって食べられるか」を判断する仕事です。
これ、 命に関わる判断 なんですよね。 「もう口から食べることは厳しいかも」「でも、本人は食べたがっている」「家族はもっと食べさせてあげたいと言っている」「主治医は判断を私に委ねてくる」。
3年目でリーダー業務を任されてからは、 このプレッシャーがずっと肩に乗ったまま でした。
延命医療への、私個人の葛藤
これは、 正解のない話 として聞いてください。
人工呼吸器を装着している超ご高齢の方、胃ろうや胃管が入っている方の嚥下評価をするとき、私の心の中には、 言葉にしにくい葛藤 がありました。
「この方は、本当にこの状態を望んでいるのかな?」 「ご家族の希望と、ご本人の希望は、同じなのかな?」
もちろん、これは 私個人の感じ方 であって、医療現場の方針を批判するつもりはありません。延命医療は、ご本人とご家族にとってかけがえのない選択です。
ただ、 私自身は、この葛藤を抱えながら9年やってきて、少しずつ消耗していった 。 それも、辞める決断につながった、 私の正直な気持ち です。
加えて、コロナ禍で 飛沫リスクの高い領域 (口から、のどから、と切っても切れない仕事)を担っていたことも、地味に効いてきていました。
つまり、「全部が重なった」
夫の転勤、1人目の復帰の記憶、2人目の妊娠、嚥下評価のプレッシャー、コロナ禍。 ひとつだけだったら、 もう少し続けられたかもしれない 。
でも、 全部が同時に来た のが、私の場合の決め手でした。
辞めて後悔したこと、たった1つ

辞めて、もう数年。 振り返って、 後悔していること は、本当に1つだけです。
それは、 「同年代の医療職の友達と、疎遠になってしまったこと」 。
収入が減ったことより、つながりの喪失がしんどい
正直に書くと、 収入が減ったこと自体は、想像していたより平気でした (これは後で詳しく書きます)。
それより、ずっとあとになってジワジワ効いてきたのが、 同僚との関わりが、ぷつんと切れてしまったこと 。
新人の頃から一緒にやってきた看護師・他のリハ職・同期のST。 「ちょっと聞いてくれる?」って、さりげなく相談できる人たち が、辞めた瞬間に 生活圏から消えました 。
あの頃は、価値が分かっていなかった
現役だったときの私は、正直、 同僚たちのありがたみを分かっていませんでした 。
「今日のあの患者さん、どう思う?」 「あの先生、機嫌悪かったよね」 「最近、寝れてる?」
なんでもない会話。 なんでもないからこそ、 それが心の支えだった ことに、辞めてから気づきました。
同年代の医療職の友達は、社会資源だった
これは、いま全力で叫びたいことです。
同年代の医療職の友達は、立派な「社会資源」
子どもが熱を出したとき、自分が体調を崩したとき、親の介護が始まったとき、ちょっとした医療の疑問が出てきたとき。
「これってどう思う?」って、 気軽に聞ける医療職の友達がいるかいないか で、人生の安心感は 全然違う んです。
30代後半から、新しい友達は難しい
そして、辞めて気づいたもう1つのこと。
この歳から、新しい友達を作るのは、努力しないと難しい 。
ママ友はできます。でも、ママ友と医療職の友達は、 役割が違う んですよね。
子どもの話で盛り上がるママ友と、医療や仕事の話で深く話せる同僚。 どっちも、別の枠で必要 だったと、いまになって痛感しています。
じゃあ、どうしたらいいの?
これから辞めようとしているSTさんへ、伝えたいことは1つ。
現役のうちに、職場の同期・同年代の同僚と、職場の外でのつながりを作っておいてください 。
LINE交換、Instagramでフォローし合う、年に1回でもご飯に行く約束をしておく。 辞めた瞬間に縁が切れるのが、いちばんもったいない です。 「同期との飲み会、めんどくさい」と思っていた現役時代の自分に、 いまの私が会えるなら、大事にしときな〜とアドバイスしたい くらいです(笑)。
辞めてよかった3つのこと
逆に、 辞めてよかったこと は、3つあります。 それぞれ、視点を変えて書きますね。
よかった1|子どもにとって|余裕のある母でいられる

これが、いちばん大きいです。
仕事を辞めてから、 子どもにイライラする回数が、明らかに減りました 。
朝、急かさなくていい。 夕方、 早めにお迎えに行ける 。 保育園から「お熱です」と連絡が来ても、 「すぐ行きます」と即答できる 。
帰ってきてからの夕飯も、 「お腹すいたー!」「はーい、すぐできるよ」 で済む(現役時代は「ちょっと待って!ママ今、洗濯物畳んでる!」と毎日キレていました…)。
子どもが「ねえ、見て見て!」と言ってきたとき、 手を止めて見られる 。
これだけで、 私の自己肯定感が、ぜんぜん違います 。
よかった2|夫婦にとって|お金の話をするようになった
これは、辞める前は予想していませんでした。
世帯収入が減ったことで、 夫と「お金の話」をする回数が、爆増しました 。
現役時代は、お互い忙しくて、家計の話なんて月1すらしてなかったんです。 それが、辞めてから 「来月の家計どうしよう」「この保険、本当に必要?」「車、1台にしない?」 と、 二人で家計会議 をするようになりました。
結果、家計が引き締まって、 節約体質 に。 そして、これは胸を張って書きたいんですが——
世帯年収が減ったのに、年間貯金額は、共働き時代と変わっていません 。
これは、 「無駄な支出を二人で見直した結果」 です。逆に言うと、共働き時代は 稼いでいる安心感で、けっこう無駄遣いしていた ということでもあります。
よかった3|自分にとって|新しいことに挑戦できている
3つ目は、 自分自身に対して 。
辞めたあとの私は、ちょっと意外な道を歩んでいます。
- 短期間ですが、 飲食店で働いてみました (医療以外の世界を見たかった)
- ブログを始めました (いま読んでいただいているこれです)
- HP制作の勉強 をしています
- FP(ファイナンシャルプランナー)の資格 を取りました
ぜんぶ、9年間STをやっているときには、 絶対に踏み出せなかった世界 。
「ST以外の自分」を、 少しずつ作り直している感覚 があります。 収入はまだまだですが、 新しい自分に出会えている感覚 が、いまの私のエネルギーになっています。
辞める?続ける?後悔しない判断軸(私が辞める前にやったこと)
ここまで読んで、 「私も辞めようかな…」と気持ちが傾いている方 もいるかもしれません。
でも、 辞めるかどうかの判断は、絶対に焦らないでください 。 私が辞める前にやって、 「やっておいて本当によかった」と思うこと を3つだけ書きます。
やってよかった1|家計管理を徹底した
これが、 私が後悔しなかった最大の理由 です。
辞める前に、 家計管理をして無駄を削減 。
具体的には、こんな項目を見直しました。

特に大きかったのは、 社宅 。古いけど、家賃が 月1万円以内 で済むのは、 収入が減っても家計が破綻しない最大の理由 でした。
→ 結果、 「夫の収入だけで、貯金・投資を続けられる」見通しが立った から、辞める決断ができたんです。
やってよかった2|FP資格を取った&ライフプランシートを作った
辞める前に、 FP(ファイナンシャルプランナー)の資格 を取りました。
「お金のことを、人任せにしない」と決めたかったんです。
そして、 ライフプランシート を作成。 20年後、30年後の家計をざっくりシミュレーションして、 「これなら大丈夫」 という見通しを夫と共有しました。
💡 ライフプランシートって何?:これからの人生で、いつ・いくらかかるかをざっくり書き出した表のこと。子どもの教育費・住宅・老後資金などを時系列で見える化するイメージです。FPさんに作ってもらうこともできるし、ネットで無料テンプレートも配布されています。
「漠然とした不安」が、 「具体的な数字」になったとき 、辞める怖さがすっと消えました。
いまも、 毎日家計簿を書いています (これが、すんごい楽しい)。
やってよかった3|転職サイトに登録だけしておいた
これは、 辞めた人みんなに勧めたい ことです。
辞める前に、 転職サイトに登録だけして、求人を眺めていました 。
これ、 何が良かったか というと——
「いざとなったら、いつでも復帰できる」 という、 心のお守り になったんです。
「辞めても、ST資格は消えない」「求人はちゃんとある」「いつでも戻れる」。 そう思えるだけで、 辞める怖さの半分は消えました 。
実際、ST特化の転職サイトは複数あって、求人を比較するだけでも面白いです。次の章で、その辺りも触れますね。
辞めた後の3つの道|転職・パート・主婦+副業
「辞めたあと、私はどうしよう…」 これが、いちばん不安なところだと思います。
私が見てきた・自分でも検討した、 3つの道 をご紹介します。
道1|別の職場に転職する
「辞める=完全に医療から離れる」じゃなくて、 職場を変えるだけ で楽になる場合もあります。
- 急性期 → 訪問リハビリ
- 急性期 → 回復期
- 急性期 → デイサービス
- 急性期 → クリニック
職場の文化や、患者層、業務の負荷は 病院ごとに本当に違います 。
もし「STの仕事自体は嫌いじゃない、でも今の職場がしんどい」なら、 転職を選択肢に入れる価値は大いにあります 。
ST特化の転職サイトに登録だけしておくと、 求人を眺めながら考えられて、気持ちが楽になる のでおすすめ。私もこれをやって、 「辞めても次がある」と思えてから動き出しました 。
代表的なサイトとしては、こんなところがあります。
- PTOTSTワーカー:全国展開・求人数が多い・まず登録する1社として。
- PTOT人材バンク:丁寧なヒアリングで、初めての転職に向いている。
- レバウェルリハビリ:LINEで相談しやすい・若手向けの求人多め。
※リンク先は転職エージェントへの登録ページです(PR)。登録は無料、個人の感想です。
道2|パート勤務に切り替える
「フル勤務はしんどいけど、完全に辞めるのも怖い」という方は、 パート勤務 という選択肢も。
メリットは、 症例から完全には離れない こと。 デメリットは、 症例数・スキルアップの機会がどうしても減る こと。
最近は 「短時間常勤」 という制度を作っている病院・施設も増えてきていて、選択肢は広がっています。
💡 パート勤務のスキル維持には:私自身も、フル勤務を離れたタイミングで知って「もっと早く使いたかった」と思ったのが、 PT.OT.ST向けの総合オンラインセミナー『リハノメ』 。月980円〜で 摂食嚥下・失語症・小児・運動器の専門講座が見放題 。家事の合間に少しずつ聞けるので、 臨床から完全に離れたくないSTには本当におすすめ です。
道3|主婦+副業(私の場合)
私が選んだのは、これです。
- 主婦業を中心 に置く
- 子どもが小さいうちは、 家にいる時間を最優先 にする
- 余裕があるときに、 ブログ・HP制作・短期バイトなど、いろいろチャレンジ する
収入は、現役時代に比べたらガクッと落ちました。 でも、 時間の自由度・心の余裕は、お金には代えられない と、いまは思えています。
ST資格も、 完全には捨てていません 。 ブログで嚥下や子どもの言葉について発信できるのは、 9年の現場経験があるからこそ 。資格は、 形を変えて活きている と感じています。
💡 辞めて、本棚に専門書が眠っているなら:国家試験の参考書や臨床の専門書は、 医学書専門の買取サイト なら、一般の古本屋より高く売れることがあります。私も本棚を整理したときに知りました。送料・段ボール無料のところを選ぶと手間がかかりません。
→ ST出産後の働き方の選択肢は、こちらでもう少し詳しく書いています: ST(言語聴覚士)として、出産後どう働く?9年勤務した私の選択肢
まとめ|迷っているあなたへ
最後に、もう一度だけ。
- 辞める決定打は、ひとつじゃなくていい 。複数の理由が重なって、自然と固まっていくものです
- 辞めて後悔するのは、お金より「人とのつながり」 。現役のうちに、同年代の医療職の友達は大事にしてください
- 辞めてよかったことは、子ども・夫婦・自分の3視点で必ず見つかる 。私の場合は、 余裕・節約体質・新しい挑戦 でした
- 家計管理を徹底すれば、お金の不安はかなり減らせる 。社宅・格安スマホ・保険見直し・NISAは、本当に効きます
- 転職サイトに登録だけしておく のは、辞めるか迷っている段階でも、心のお守りになる
- 辞めた後の道は、転職・パート・主婦+副業の3つ 。どれを選んでも、正解にできます
夜中、子どもの寝息を聞きながら「ST 辞めたい」と検索しているあなたへ。
辞めても、続けても、どっちも正解にできます 。 だって、選んだ道を「正解だった」と思えるように、 これから自分で作っていける のだから。
私の話が、 「ひとりじゃないんだ」 と思ってもらえるきっかけになっていたら、本当にうれしいです。
同じ立場のST仲間と、ゆるくつながりたいです。 よかったら、 お問い合わせ から、ひとことメッセージください。返信は遅くなることもありますが、必ず読みます。
【参考にした情報】
- 厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(医療職の年収統計)
- PTOT人材バンク「言語聴覚士(ST)の離職率と離職の原因」
- 日本言語聴覚士協会 公開資料
※本記事は私個人の経験と意見であり、すべての言語聴覚士の方に当てはまるものではありません。退職や転職の判断は、ご家族と相談しながら、ご自身の状況に合わせてなさってください。本記事の内容をもって生じたいかなる結果についても、責任を負いかねます。
ご質問やご相談があれば、お問い合わせからお気軽にどうぞ。

