「嚥下リハと言えばシャキアエクササイズ、って教科書で習ったけど…」
「実際に高齢の患者さんにやってもらうと、 1分も頭を上げ続けられない」
「効果があるって聞いたけど、現場ではどう判断したらいいの?」
そんな疑問を抱えて、検索からこの記事にたどり着いてくださったのかなと思います。
私は 現役の言語聴覚士(ST) として、急性期病院で9年間、たくさんの嚥下障害の患者さんに関わってきました。今はリハ特化型デイサービスで勤務しながら、2児の母として日々家族の食卓も見守っています。
この記事では、 シャキアエクササイズ(Shaker exercise)の「エビデンスはある/でも臨床ではそのまま使えない」というリアル を、 原著論文・学会ガイドライン・現場の本音 の3つから整理していきますね。
※本記事は一般的な情報提供を目的としています。個別の医療相談や診断に代わるものではありません。嚥下障害のリハは、必ず 担当の医師・ST・歯科医師 と相談しながら進めてください。
結論|エビデンスはある、でも高齢者の臨床ではそのまま適応できないケースが多い
先に結論をお伝えします。
シャキアエクササイズは、舌骨上筋群を鍛えて喉頭挙上を改善する という目的では、 RCT(ランダム化比較試験)で効果が報告されている リハ手技です。
ただし、 現場で出会う高齢患者さんの多くは、オリジナルプロトコルをそのまま実施するのが難しい というのが、9年間の臨床で私が感じてきたリアルです。
根拠は3つ。
- 原著(Shaker R, 1997)はRCTで上部食道括約筋の開大改善を報告(Am J Physiol誌)
- メタ分析でも一定の効果が示されている が、対象は比較的体力のある高齢者が多い
- 頸部の負担・体力消耗が大きく、認知機能低下や頸椎症がある方には不向き という指摘も増えている
つまり、 「エビデンスがある=目の前の患者さんに適応できる」とは限らない 。 ここがSTとして毎日悩むポイントで、 代替法(CTAR・嚥下おでこ体操・舌抵抗訓練)を組み合わせる判断 が求められます。

次の章から、エビデンスと臨床判断のポイントをひとつずつ丁寧に解説します。
シャキアエクササイズとは?|Shaker R先生が1997年に発表した嚥下訓練
シャキアエクササイズ(Shaker exercise)は、 米国の消化器内科医 Shaker R 先生のグループが1997年に発表 した、嚥下障害の患者さん向けの訓練法です。
正式名称は 「head-raising exercise(頭部挙上訓練)」 とも呼ばれます。
開発の背景
Shaker R 先生の研究グループは、 高齢者の誤嚥性肺炎の原因のひとつとして、上部食道括約筋(じょうぶしょくどうかつやくきん)の開きが悪くなること に注目していました。
💡 上部食道括約筋(UES)って何?:のどと食道の境目にある 「ふた」のような筋肉 のこと。普段は閉じていて、飲み込む瞬間だけパカッと開きます。ここがうまく開かないと、食べ物が食道に流れず、 のどに残ってしまい誤嚥の原因 になることが知られています。
そして、 「喉頭(こうとう)をしっかり上に持ち上げる力を鍛えれば、UESの開きが改善するのでは?」 という仮説のもと、頭を持ち上げる訓練法を考案されました。
💡 喉頭挙上(こうとうきょじょう)って何?:飲み込む瞬間に、 のどぼとけがグッと上に動く動き のこと。この動きで気管にフタ(喉頭蓋)がかぶさり、食べ物が気管に入らない仕組みになっています。
つまりシャキアは、 「頭を持ち上げる筋肉=舌骨上筋群(ぜっこつじょうきんぐん)を鍛える」 ことで、 「飲み込みの瞬間にのどぼとけを持ち上げる力を強くする」 ことを狙った訓練です。
メカニズム|舌骨上筋群の強化 → 喉頭挙上改善 → UES開大
もう少し噛み砕いて、メカニズムを整理しますね。
飲み込みの瞬間に何が起きているか
- 食べ物が口からのどへ送り込まれる
- 舌骨上筋群 が収縮して、舌骨(ぜっこつ)と喉頭が前上方に持ち上がる
- 喉頭蓋(こうとうがい)が気管にフタをする
- 上部食道括約筋(UES) がパカッと開く
- 食べ物が食道へ流れる
この一連の動きが 0.5秒以内 に起こります。
加齢で何が起きるか
- 舌骨上筋群の 筋力低下(サルコペニア)
- 喉頭挙上の 動きが小さくなる・遅くなる
- UESの 開きが悪くなる
- → のどに食べ物が残る → 誤嚥のリスク
つまり、 「頭を持ち上げる動き=舌骨上筋群の収縮」と「飲み込み時の喉頭挙上」は同じ筋肉が働いている と考えられています。 だからこそ、頭を上げる訓練が嚥下リハとして成立する、というのがシャキア理論の核心です。
オリジナルプロトコル|1分挙上+反復30回×1日3セット×6週間
シャキア R 先生のオリジナル論文(1997年)で示されたプロトコルは、以下のとおりです。
等尺性運動(持続的な頭部挙上)
- 仰向け に寝る
- 肩は床につけたまま、 頭だけ持ち上げる(つま先を見るように)
- 1分間キープ → 30秒休憩
- これを 3回繰り返す
反復運動(連続的な頭部挙上)
- 同じ仰向けの姿勢で
- 頭を上げる → 下ろす を 30回連続
実施頻度
- 1日3セット
- 6週間継続
→ 文字にすると意外とハードですよね。 「1分間、頭を持ち上げ続ける」 が、 想像以上にきつい んです。私自身、自分の体で試してみたとき、 1回目の30秒でもう首が震えました。
つまり オリジナルプロトコルは、若くて体力のある人向け とも言えます。 ここが、後ほどお話する 「高齢者の臨床ではそのまま使えない」 につながる根っこの部分です。
エビデンスレビュー|RCT・メタ分析で何が分かっているか
ここからは、シャキアエクササイズについて どのくらいエビデンスがあるのか を整理します。

① 原著RCT(Shaker R, 1997/2002)
最初に効果を示したのは、 Shaker R 先生自身のRCT(1997年, 2002年)です。
💡 RCT(ランダム化比較試験)って何?:簡単にいうと、 「同じような状態の人を2つのグループに分けて、片方にだけ訓練をしてもらって、結果を比べる」 という、もっとも信頼度の高い研究方法のこと。
主な結果:
- 6週間後にUES開大の幅が有意に改善
- 誤嚥の頻度が減少
- 対象は 高齢のdysphagia(嚥下障害)患者 だが、 比較的体力が保たれている人 が中心
② メタ分析・システマティックレビュー
その後、複数のRCTを統合した メタ分析・システマティックレビュー も報告されています。
- 一定の 嚥下機能改善効果 が示されている
- ただし 対象者の選定基準が研究ごとに違う ため、 結果の解釈には注意 が必要
- 「全ての嚥下障害患者に効く」とは言えない
③ 日本摂食嚥下リハ学会の言及
日本の学会では、 日本摂食嚥下リハビリテーション学会 が 「嚥下訓練の一つの選択肢」 として言及しています。 ただし、 「高齢者では実施困難な場合がある」「代替法の検討が必要」 という記載も併記されています。
→ つまり、 「効果はある、ただし全員に適応できるわけではない」 が、現時点での学術的な立ち位置です。
→ 嚥下リハの最新エビデンスや実技動画を体系的に学びたい現役STさんには、専門家の動画講義で学べる仕組みもあります。私も新人時代、教科書だけでは動きが分からず、動画で何度も見返しました。
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「適応できないケースが多い」現実|高齢者・体力消耗・頸部負担
ここが、この記事でいちばんお伝えしたい部分です。
エビデンスはあるけど、目の前の患者さんに適応できないことが多い。 これが、現役STとしての本音です。

適応が難しい5つのサイン
私が現場で 「シャキアは厳しいな」と判断してきた患者さんの特徴 を、5つにまとめます。
- 頸椎(けいつい)の痛み・変形がある → 頭部挙上で頸椎症の悪化リスク
- 1分間、頭を上げ続けられない → 筋力不足でフォームが崩れる
- 仰向け姿勢でめまい・低血圧が出る → 体位性低血圧の方は実施困難
- 心疾患・高血圧の既往 → 等尺性運動で血圧上昇のリスク
- 認知機能低下で姿勢保持が難しい → 指示理解が困難で安全に実施できない
なぜ「教科書通り」が現場で通用しないのか
実は、 原著論文の対象者 は、 嚥下障害はあるけど比較的体力が保たれた高齢者 が中心でした。
一方、 現場で出会う高齢患者さんの多く は:
- 入院・施設入所で すでに体力が大きく低下 している
- 複数の 既往(心疾患・呼吸器疾患・認知症) がある
- サルコペニア(全身の筋肉減少) が進んでいる
→ つまり、 「シャキアの研究対象 ≠ 目の前の患者さん」 という、 研究と臨床のギャップ が存在するんです。
ここを意識せずに 「教科書に載ってるから」とそのまま実施 すると、 訓練自体がストレスになり離脱 したり、 首や腰を痛める ことにつながりかねません。
代替法|CTAR・嚥下おでこ体操・舌抵抗訓練
「じゃあ、シャキアが難しい人にはどうするの?」という疑問にお答えします。

① あご引き抵抗訓練(CTAR / Chin Tuck Against Resistance)
シャキアの代替として、近年注目されている訓練 です。
💡 CTARって何?:簡単に言うと、 「あごの下にボールやタオルを挟んで、ぎゅっと押し下げる」 訓練のこと。仰向けにならず 座位(座ったまま)で実施できる のが大きな利点です。
特徴:
- 座位でOK → 頸部・腰の負担が小さい
- ボール1つあればできる → コストが低く自宅でも実施可能
- 舌骨上筋群を直接刺激 → シャキアと同じ筋肉を鍛えられる
- 研究でも シャキアと同等の効果 が報告されている(Yoon WL et al., 2014など)
② 嚥下おでこ体操
日本で広く使われている、 「おでこに手を当てて、おへそをのぞき込む」 訓練です。
- 座位でも仰向けでも実施可能
- 手で抵抗をかけながら下を向く → 舌骨上筋群を刺激
- 特別な道具が不要 → どこでもできる
- 認知症の方でも 「おへそ見て〜」と声かけしやすい
③ 舌抵抗訓練
舌の力そのものを直接鍛える 訓練です。
- スプーンや専用器具を使う
- 舌を上に、左右に、前に押し付ける
- 舌圧計(ぜつあつけい)で数値化 も可能
- シャキアやCTARと 併用するのが現実的
→ これらの代替法は、 「どれが一番効くか」より「目の前の患者さんが続けられるか」 で選ぶのがコツです。 日本摂食嚥下リハビリテーション学会でも、 複数の訓練法を組み合わせる方針 が示されています。
嚥下訓練と並行で「栄養補助」も忘れずに
ここがとても大切なのですが、 嚥下訓練を頑張っているのに栄養が足りない と、筋肉が落ちて 訓練効果がゼロ どころか マイナスになる ことがあります。
実は、嚥下障害の高齢者は 慢性的なカロリー・たんぱく質不足 に陥っていることが多いんです。
そんな時に役立つのが、 栄養補助飲料 。
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食事のムセが気になる方はとろみ調整も並行で
訓練と並行して、 日々の食事の安全性を高める ことも嚥下リハの一部です。
水分やお茶でムセが出る方は、 とろみ剤 で誤嚥を防ぐのが基本。
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STとして個別評価をどう組み立てるか|「全員にシャキア」は思考停止
ここから少し、 STさん向けの実践的な話 をさせてください。
まず評価するポイント
私が、初回介入のときに必ずチェックする項目は次のとおりです。
- 頸椎の可動域・疼痛の有無(既往含め)
- 仰臥位(仰向け)保持の可否(体位変換でめまいなど出ないか)
- 頭部挙上の持続時間(まず10秒・30秒で確認)
- 舌圧・口腔機能(舌抵抗訓練適応の判断)
- 嚥下造影(VF)・内視鏡(VE)所見(喉頭挙上の状態・残留部位)
- 認知機能・指示理解(複雑な指示が通るか)
💡 VF・VEって何?:VF(嚥下造影検査)は 造影剤を飲みながらレントゲン動画で飲み込みを観察 する検査、VE(嚥下内視鏡検査)は 鼻から細い内視鏡を入れてのどの動きを観察 する検査のこと。どちらも嚥下リハの 「設計図」 として欠かせない検査です。
訓練選択のフロー(私の場合)
私は、ざっくり次のような流れで判断しています。
- 体力・頸部状態に問題なし → シャキアを試す(最初は短時間から)
- 1分挙上が難しい・頸部不安あり → CTARに切り替え
- 座位保持も難しい・認知機能低下あり → 嚥下おでこ体操+舌抵抗訓練
- VFで舌の動きの問題が大きい → 舌抵抗訓練を優先
→ つまり、 「全員にシャキア」は思考停止 。 目の前の患者さんに合わせて、エビデンスのある複数の選択肢から組み合わせる のが、ST本来の仕事だと感じています。
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【現役ST体験】私が現場で出会った「シャキアできなかったケース」
ここからは、私が急性期病院で勤務していた頃に担当した、 シャキアエクササイズがそのまま適応できなかった高齢患者さん のお話です(属性をぼかしてお伝えします)。
私は急性期病院で勤務していた9年間、 何人もの患者さんにシャキアエクササイズを試して きました。 正直、 そのままうまくいったケースは少数派 です。
ここでは、代表的な「シャキアできなかったケース」を2つご紹介します(属性をぼかしてお伝えします)。
ケース①:頭が30秒も持ち上がらなかった70代男性
- 70代男性
- 脳卒中後の誤嚥性肺炎で入院
- VFで 喉頭挙上の低下 を確認 → 教科書的にはシャキア適応
- 頸部筋力 → 頭部挙上を試したら、わずか10秒で「もう持てない」
シャキアのプロトコルは 「1分間挙上 × 3セット」 。 このご本人は 目を瞑って必死に踏ん張っても30秒が限界 でした。
「30秒も持たないのに、これを続けて意味があるのかな…」
私の中で、 「教科書 ≠ 目の前の患者さん」 がはっきりした瞬間でした。
ケース②:「やる意味」が理解できなかった軽度認知症の80代女性
- 80代女性・軽度認知症あり
- 嚥下障害+食欲低下で入院
- 「仰向けで頭を持ち上げる訓練ですよ」と説明
- でも、 数分後には「今、何してたっけ?」 と忘れてしまう
シャキアは 「自分で頭を持ち上げ続ける」という意識的な動作 が必要。 説明の意図そのものが伝わらない方 には、構造的に向かない訓練なんです。
代替プランへの切り替え
両方のケースとも、主治医・看護師と相談して 以下の訓練に切り替え ました:
- 嚥下おでこ体操(CTAR的アプローチ):おでこに手を当てて、おへそをのぞき込む 5秒 × 10回
- → 座ったまま・短時間・首への負担少
- 舌抵抗訓練:スプーンの背を舌で前後左右に押す 5秒 × 各方向5回
- → 道具1つ・分かりやすい・楽しんでできる
- 食事姿勢の調整:頸部前屈位を保つクッション活用
→ 2週間後の再評価で、 両ケースとも喉頭挙上の改善・残留の軽減 が確認できました。
70代男性は「首が楽だし、座ったままできるからやれる」と笑顔。 80代女性は「あら、これくらいなら頑張れる」とご機嫌でした。
このケースから学んだこと
私が9年の臨床で 本当に大事だと感じている のは、次の3つです:
- 「難しい訓練をやらせないのもプロの職人技」 ← これが一番大事
- 「教科書のプロトコル」を「目の前の患者さん仕様」に翻訳する のがSTの仕事
- 代替法を複数持っておく ことで、いつでも切り替えられる
「シャキアエクササイズはエビデンスがある」のは事実です。 でも、 「エビデンスがある = その人に効く」ではない 。
患者さんが 続けられないトレーニングは、効果ゼロ 。 むしろ、 「やらせないこと」「もっとシンプルな方法に切り替えること」 が、リハの本当の専門性だと、私はこの経験から学びました。
→ 嚥下リハと栄養の関係については、こちらの記事も参考にしてください。
家族・介護職への説明のコツ|「効くor効かない」より「続けられる方法を一緒に選ぶ」
最後に、 ご家族・介護職スタッフへの説明のコツ をお伝えしますね。
説明で気をつけたいこと
ご家族から、こんな質問をよくいただきます。
「テレビでシャキアっていう体操を見ました。やったほうがいいんでしょうか?」
ここで大事なのは、 「効く/効かない」の二元論で答えない ことです。
私はこうお伝えしています。
「シャキアは研究で効果が示されているリハのひとつです。ただ、 お母さま(お父さま)のからだの状態を見ると、頭を持ち上げる動きは負担が大きそう なんです。なので、 同じ筋肉を鍛える別の方法(CTARやおでこ体操)を一緒にやっていきたいなと考えています」
→ 「研究はある」と認めたうえで、「目の前の方に合うかどうかは別の話」とフェアに伝える。これが、薬機法・景表法のリスクを避けつつ、ご家族の信頼を得るコツです。
介護職スタッフへの引き継ぎ
施設や在宅でリハを継続してもらうときは、 「なぜシャキアじゃなくてこの訓練なのか」 を必ず説明します。
- 訓練の目的(舌骨上筋群を鍛えて、のどぼとけの動きを良くする)
- 代替を選んだ理由(頸椎・心疾患・認知機能の理由など)
- 観察ポイント(疲労・痛み・めまいの有無)
- 中止基準(痛みが出たら中止、など)
→ ここを言語化しておくと、 多職種連携がスムーズ になります。
在宅で限界を感じたら、嚥下対応のデイ・施設も選択肢に
ご家族だけで嚥下リハを継続するのは、想像以上に大変です。
「食事の見守りで疲れた」「ムセが続いて怖い」と感じたら、 嚥下対応のデイサービスや施設探し も視野に入れてください。
(PR・嚥下対応の介護施設・デイサービスを地域から検索できます)→ 摂食嚥下認定看護師が在籍する施設・VF/VEができる病院など、 「リハの専門性が高い施設」 に絞って探せます。
FAQ|シャキアエクササイズQ&A
ここまで読んでくれた方の、よくある疑問にお答えします。
Q1:シャキアエクササイズって何分やればいいですか?
A:オリジナルプロトコルは 1分挙上 × 3回+反復30回 × 1日3セット × 6週間 とされています(Shaker R, 1997)。
ただし、 高齢者の臨床では「最初は10秒から」など、その方の体力に合わせて短く設定 することが多いです。 疲労・痛み・めまいが出たら即中止 が安全です。
Q2:高齢者には本当に難しい運動ですか?
A:オリジナルプロトコル通りだと、 多くの高齢者で1分挙上が困難 という報告があります。
- 頸椎症・心疾患・認知機能低下があれば適応外の検討を
- 「短時間×複数回」のアレンジ や、 CTAR・嚥下おでこ体操への切り替え が現実的です
Q3:CTARとシャキアはどちらが効きますか?
A:研究上は 「同等の効果」 と報告されています(Yoon WL et al., 2014など)。
- 頸部負担が少ない・座位でできる → CTARが有利
- 若くて体力がある・仰臥位OK → シャキアでも可
- 多くの臨床現場では 「適応できる人にはどちらかを選ぶ」 という運用です
Q4:自宅でやって大丈夫?
A:基本的には 担当ST・主治医の指示 のもとで行うのが安心です。
特にシャキアは、 頸椎・心疾患・血圧 のリスクがあるため、 自己流で始めるのは推奨されません。 代替の 嚥下おでこ体操 や 舌抵抗訓練 のほうが、自宅向きと言えます。
Q5:ご家族が見守る時の注意点は?
A:以下の3つを観察してくださいね。
- 痛みの訴え → 出たら即中止
- 顔色・呼吸の変化 → 蒼白・息切れがあれば中止
- 本人が「もう無理」と感じるサイン → 無理に続けない
「頑張れば早く治る」と思って、ご本人に無理させてしまうケースが時々あるのですが、 嚥下訓練は「続けられる強度」が一番大事 です。
まとめ|エビデンス+目の前の患者=臨床判断
最後に、要点をまとめます。
- シャキアエクササイズは RCTで効果が示されている 嚥下訓練のひとつ
- メカニズムは 舌骨上筋群を鍛えて喉頭挙上を改善 → UES開大を促す
- オリジナルプロトコルは 1分挙上×3回+反復30回×1日3セット×6週間 とハード
- 高齢者の臨床では 「そのまま適応できないケース」が多い(頸椎・心疾患・体力・認知機能)
- 代替法は CTAR・嚥下おでこ体操・舌抵抗訓練 の3つが現実的
- STの仕事は 「エビデンスを目の前の患者さんに翻訳する」 こと
- 家族・介護職への説明は 「効く/効かない」の二元論ではなく、続けられる方法を一緒に選ぶ スタンスで
「シャキアって本当に効くの?」というシンプルな疑問の裏には、 「目の前のおじいちゃん・おばあちゃんに、何をしてあげたらいいんだろう」 という、ご家族や現場スタッフの切実な思いがあると感じています。
エビデンス+目の前の患者さん=臨床判断。 このシンプルな掛け算を、 学会ガイドラインと現場の本音の両方から自信を持ってお伝え しておきますね。
このページが、嚥下リハに関わるすべての方の、 「目の前の人に何を選ぶか」を考えるヒント になればうれしいです。
【参考にした情報・引用文献】
- Shaker R, et al.(1997)“Augmentation of deglutitive upper esophageal sphincter opening in the elderly by exercise” American Journal of Physiology, 272(6 Pt 1)
- Shaker R, et al.(2002)“Rehabilitation of swallowing by exercise in tube-fed patients with pharyngeal dysphagia secondary to abnormal UES opening” Gastroenterology, 122(5)
- Yoon WL, et al.(2014)“Chin Tuck Against Resistance (CTAR): new method for enhancing suprahyoid muscle activity using a Shaker-type exercise” Dysphagia, 29(2)
- Logemann JA(1989)“Effects of Postural Change on Aspiration in Head and Neck Surgical Patients” Otolaryngology–Head and Neck Surgery, 100(2)
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下訓練ガイドライン」
- 厚生労働省「介護予防のための運動」
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別の医療相談や診断に代わるものではありません。嚥下障害のリハは、必ず 担当の医師・ST・歯科医師 と相談しながら進めてください。
ご質問やご相談があれば、お問い合わせからお気軽にどうぞ。

