「お母さんが、最近食べてくれないんです」
「父が肉を食べると、結局吐き出してしまう」
「もうおかゆしかないのかな…でも本人が嫌がって」
そんなご相談、現場でも、自分の家でも、本当によく聞いてきました。
私は言語聴覚士(ST)として 9年間、急性期病院で嚥下(飲み込み)リハビリ に関わり、片麻痺のあった祖父の介護も経験しました。
このページでは、 祖父が「これは食べてくれた」嚥下食レシピ5選 と、 家にあるもので作れる工夫 をお伝えします。
※本ページは一般的な情報提供を目的とした内容です。個別の症状や治療方針については、必ずかかりつけ医にご相談ください。
結論|嚥下食は「病人食」ではない
先に、いちばん伝えたいことから。
嚥下食=おかゆ・ペースト食、ではありません。
「飲み込みが悪くなったから、もうおかゆしか…」と諦めてしまう前に、 見た目・特別感・まとまる食材 の3つを工夫してみてほしいんです。
実際、祖父は おかゆを嫌がりました 。
「おかゆは嫌いで、 病気した時に食べるものという認識 があって。だからこそ、見た目も大事だなーと思いました」
ドロドロしているから美味しくなさそう、安全なのに食べてくれない。これは、家族にしか分からないリアルだなと感じます。
→ だから、この記事では 「丼物」「具沢山の汁物」 を中心に紹介します。普段の食事の延長で、本人が「お、いつものごはんだ」と思える形にする工夫です。
大事な3つの視点|見た目・特別感・まとまる食材
レシピに入る前に、嚥下食を考えるときの 3つの軸 をお伝えしますね。
① 見た目|「病人食っぽさ」を消す
ドロドロしたものを見ると、本人は 「食べたくない」と感じる ことが多いんです。
- ご飯の形を残す(丼物にする)
- お椀ではなく 普段使っている茶碗・丼 に盛る
- 彩りを足す(ネギ・鰹節・刻みのりなど)
② 特別感|「いつもより嬉しい」一品
「うなぎ」「ネギトロ」のような ちょっと贅沢な食材 は、本人の食欲スイッチを入れます。
毎日は無理でも、 週に1回・誕生日・半額タイミング で取り入れるだけで十分。
③ まとまる食材|口の中でバラけないものを選ぶ
これがいちばん専門的なポイント。 口の中でバラけないこと が、嚥下が悪くなった方の安全な食事の条件です。
💡 「まとまる」って何?:口に入れたあと、 食べ物がひとかたまりになって喉まで運べる状態 のこと。バラけると気管に入りやすく、誤嚥(食べ物が間違って気管に入ること)のリスクが上がります。
代表的なまとまる食材は、 ひきわり納豆・とろろ・めかぶ 。詳しくは後のセクションで紹介しますね。
祖父が食べてくれた|嚥下食レシピ5選

ここからが本題。 祖父が「これは食べてくれた」と感じた料理5選 を紹介します。
ランキング形式ですが、 本人の好み・症状によって合うものは違う ので、参考程度に見てくださいね。
1位|ネギトロ丼(祖父イチオシ)
祖父がいちばん喜んで食べたのが ネギトロ丼 でした。もともと刺身が大好きだったんです。
- マグロが もともと脂で柔らかい
- ネギの香りで 食欲スイッチが入る
- 醤油の味が しっかり感じられる
- ご飯と 混ざってまとまりやすい
→ 嚥下食の理想を、ほぼ全部満たしている一品です。
作り方のコツ
ご飯は 少しやわらかめに炊いて、温かいうちに丼へ 。
ネギトロをのせて、 刻んだ青ネギ・刻みのり を少々。醤油を少しかけて、本人の前で軽く混ぜてあげると、 まとまり感がさらに増します 。
2位|けんちん汁(具沢山だけど食べやすい)

意外に思われるかもしれませんが、 けんちん汁 は祖父が大好きでした。
- 大根・人参・里芋・豆腐を 柔らかく煮込む
- 油揚げや厚揚げが 汁を含んでまとまりやすい
- 出汁の味が しっかり染みている
→ 「具沢山だから食べにくいのでは?」と思われがちですが、 柔らかく煮込めば、むしろ汁でまとまって食べやすい んです。
作り方のコツ
野菜は 普段より小さめに切って、少し長めに煮込む 。里芋や豆腐は最初から大きさを揃えて入れると食べやすいです。
汁にとろみを足したい時は、 片栗粉でゆるくとろみをつける か、市販のとろみ剤を少量加えてもOK。
→ とろみの目安については とろみ剤おすすめ5選を現役STが本音比較 で詳しく書いています。
3位|中華丼(柔らか野菜のあんかけ)
中華丼は、 あんかけが「天然のとろみ剤」 になってくれる優秀な料理です。
- 白菜・人参・うずらの卵を 柔らかく煮る
- 豚バラ薄切りか ひき肉 に変えるとさらに食べやすい
- とろみのついたあんで、 ご飯と具がまとまる
作り方のコツ
野菜は しんなりするまでしっかり加熱 。歯ぐきでつぶせる柔らかさが目安です。
肉は 薄切り(しゃぶしゃぶ用・すき焼き用)かひき肉 に変えると、咀嚼の負担が一気に減ります。
💡 現役STの現場メモ:あんかけの とろみの濃さ は、本人の嚥下機能に合わせて調整してください。サラサラすぎても、固まりすぎても食べにくいので、 とんかつソースくらいの粘度 を目安にすると安心です。
4位|親子丼(ひき肉バージョン)
普通の親子丼の 鶏もも肉を「鶏ひき肉」に置き換える だけで、嚥下食に早変わりします。
- 鶏ひき肉は そのまま玉ねぎと一緒に煮るだけ で柔らかい
- 卵が 全体をまとめてくれる
- 玉ねぎは しっかり煮込む と歯ぐきでつぶせる
→ 「肉が大好きだけど食べられない」という方に、ぜひ試してほしいレシピです。
作り方のコツ
卵は 半熟〜しっかり目 まで、本人の好みで調整。半熟のほうがまとまりやすい印象です。
味付けは いつもの親子丼でOK 。「嚥下食用」と特別扱いしないのが、本人の食欲を保つコツです。
5位|うなぎ丼 or 卵かけご飯(コスト対策付き)
うなぎ丼 は、祖父にとって特別な日のごちそうでした。
- うなぎは タレで柔らかく蒸されている
- 骨もほぼなく、 そのまま噛める柔らかさ
- タレの味が 食欲を引き立てる
ただし、コストの問題があります。
コスト対策
特別な日(誕生日)や、スーパーの半額タイミングを狙うのがおすすめです。 毎日は無理でも、月に1〜2回でも本人の楽しみになります。
毎日のごはんとして、もう少し気軽に作れるのが 卵かけご飯 。
- 温かいご飯に 生卵をかけて、よく混ぜる
- 醤油やめんつゆで味付け
- まとまりやすく、 嚥下障害の方にも食べやすい
→ 「今日は何にしよう…」と困った日の 救世主メニュー です。
💡 作るのが難しい日に|嚥下対応の冷凍宅食という選択肢
「今日はもう、作る元気がない…」そんな日もありますよね。
我が家でも祖父の介護中、 疲れた日には市販の冷凍宅食に頼る ことがありました。最近は 嚥下対応の冷凍惣菜 も増えていて、SOMPOグループが手がける 食楽膳 は管理栄養士監修で やわらか食 から選べるのが安心です。
💡 現役STの本音:自宅介護で大事なのは「続けられること」。 毎日完璧に作ろうとしない、たまには宅食に頼る という選択肢を持っていると、家族の負担が大きく変わります。
→ 管理栄養士監修、嚥下対応の冷凍惣菜を自宅へ【食楽膳】(PR)
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「まとまる食材」3選|口の中でバラけないものを選ぶ

ここで、 大手メディアではあまり紹介されない、現場で本当に重宝した3つの食材 を紹介します。
私が現場でも、家でも、 「これがあれば嚥下食はだいぶ救われる」 と感じてきた素材です。
① ひきわり納豆
普通の納豆より、 粒が細かくて噛む負担が少ない のが「ひきわり納豆」。
- そのまま ご飯にのせるだけ
- 卵かけご飯に 追加する とさらに食べやすい
- ネバネバが 口の中でまとまる
→ 「今日もう疲れた…」という日でも、 ひきわり納豆+ご飯+卵 で立派な嚥下食ができます。
② とろろ
長いも・自然薯をすりおろした 「とろろ」 は、まとまる食材の王様。
- ご飯にかければ 「とろろ丼」
- 出汁で伸ばせば 「とろろ汁」
- うどんにかけても、まぐろにかけても 何にでも合う
→ スーパーで 冷凍とろろ も売っているので、忙しい日でも準備が楽です。
③ めかぶ
刻んであるパックの めかぶ も、口の中でバラけにくい優秀な食材。
- そのまま ご飯にのせる
- 納豆と混ぜて ねばねば丼
- 豆腐の上にのせて 冷奴に
→ 海藻の香りで、食欲も刺激してくれる印象です。
肉が食べたいのに食べられない時の工夫

祖父は 肉が大好き でした。
でも、嚥下が悪くなってきてからは、こんな悩みが出てきました。
咀嚼しても塊になってごっくんできず、吐き出してしまう。
「もう肉は無理かな…」と諦めかけたのですが、 工夫しだいで食べられる肉メニュー はちゃんとありました。
工夫①|ひき肉に変える
塊肉が無理でも、 ひき肉なら食べられる ことが多いです。
- 親子丼の鶏肉 → 鶏ひき肉
- 麻婆豆腐や中華丼 → 豚ひき肉
- そぼろ丼 → 鶏ひき肉or合いびき
→ 同じ料理でも、肉を変えるだけで嚥下食になります。
工夫②|すき焼き用の薄切り肉に変える
ひき肉だと味気ない、 「肉らしさ」が欲しい時 は、すき焼き用の薄切り肉。
- 薄いから 噛み切りやすい
- 出汁で煮込めば さらに柔らかく
- 「肉を食べた」という 満足感が残る
→ 焼肉やステーキは難しくても、 すき焼き・肉じゃが・牛丼 ならハードルが下がります。
工夫③|うなぎに変える(特別な日に)
「どうしても柔らかい肉的なものが食べたい」という時は、 うなぎ 。
- 蒸されているから 柔らかい
- タレの味が 食欲を引き出す
- 骨もほぼなく、 そのまま噛める
工夫④|コスト対策
うなぎや高めのすき焼き用肉は、誕生日・記念日・スーパーの半額タイミングを狙うのがおすすめ。
介護家計のリアルとして、 毎日特別な食材は買えません 。
「週に1回の楽しみ」「月に1回のごちそう」と決めると、家計にも本人の気持ちにも、無理なく続けられます。
まず市販品から試す|手作り失敗のショックを避ける
ここで、 私がいつもご家族にお伝えしてきたこと を1つ。
手作りして食べれなかった時のショックがあるので、まずは市販品を試してみて、自分の家族に合うものを探るといいと思います。
嚥下障害は 症状もさまざま です。
- 入れ歯がある人・ない人
- 麻痺がある人・ない人
- 認知症の有無
- 食事の好み
これだけ違いがあるので、 「Aさんに合った嚥下食が、Bさんに合うとは限らない」 んです。
市販品で試すメリット
- 失敗しても 「合わなかった」で済む(時間と労力を消耗しない)
- 介護用レトルトは 嚥下しやすい形状を専門家が設計済み
- 1食ずつ買えるので、 少量から試せる
→ 介護用レトルトの中華丼・親子丼・うなぎ丼などがスーパーや楽天で買えます。
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「これは食べてくれた」というメニューが見つかったら、 同じ味付け・同じ柔らかさを目指して手作り していくのが、いちばん失敗が少ないです。
時短したい日は宅配サービスも
「毎日作るのがしんどい」という日には、 やわらか食の宅配サービス も選択肢に入ります。
- 1食ずつ冷凍で届く
- 嚥下食の 段階別に選べる
- 1食500〜800円程度(介護用レトルトと同じくらい)
▶ MFS やわらか食 お試しセット(6食冷凍弁当)を楽天で見る
→ 「無理なく続ける」ために、家族が 自分を追い詰めない選択肢 も持っておいてくださいね。
ペースト食にする前に|「変身させる」発想
おかゆやペースト食は、もちろん 専門家の指示があれば必要 な場合もあります。
ただ、 祖父の場合は 「おかゆ=病気のごはん」というイメージで、本人が嫌がりました。
そこで私が試したのが、 「ペースト食にする」のではなく「料理に変身させる」 という発想です。
例|おかゆが嫌な人への変身レシピ
| 元の食材 | 変身後 | ポイント |
|---|---|---|
| おかゆ | お茶漬け | 出汁・梅・鮭で味と見た目を変える |
| おかゆ | 雑炊 | 卵・ネギを加えて「普通のごはん」に |
| おかゆ | リゾット風 | 牛乳・チーズでメリハリ |
→ 「ドロドロしてる」のは同じでも、 「おかゆ」じゃなくなる と本人の受け止めが変わることがあります。
お茶漬けの作り方
普通のご飯に、 熱いお茶・出汁 をかけるだけ。
- 鮭フレーク・梅・刻みのりを トッピング
- お茶の温度で 食べやすい温度に調整
- 水分でご飯がほぐれて まとまりやすい
→ 祖父も「お茶漬けは美味しい」と言ってくれました。同じ「水分でほぐれたご飯」でも、 見た目と味で印象がぜんぜん違う んです。
⚠ 注意:自己判断でペースト食をやめる・始めるのは避けてください。 かかりつけ医・STの指示 がある場合は、その指示を優先してくださいね。
よくある質問(FAQ)
Q1. ペースト食じゃダメですか?
A. 「ダメ」ではありません 。本人の嚥下機能によっては、ペースト食やゼリー食が必要な場合もあります。
ただ、 「ペースト食以外の選択肢もある」 ということは、知っておいてほしいなと思います。
私の祖父の場合は、おかゆを嫌がったので、丼物や具沢山の汁物に切り替えました。 本人が好む見た目と味のほうが、食事量が増える こともあるんです。
→ 切り替える時は、必ず かかりつけ医・STに相談 してから進めてくださいね。
Q2. 食欲がない時は、どうしたらいいですか?
A. まずは 「食べたいもの」を聞いてみる ところからです。
「何でもいい」と言われたら、 過去に好きだったもの・特別な日のごちそうメニュー を提案してみてください。
うなぎ・寿司・すき焼きなど、 「ちょっと贅沢」な食材 は食欲スイッチを入れてくれることが多いです。
それでも食欲が戻らない・体重が落ちている場合は、 必ず医師に相談 を。脱水・低栄養のリスクがあります。
Q3. 病院食みたいに見せないコツは?
A. 大きく3つあります。
- 普段使っている食器で出す(介護用の食器より、いつもの茶碗・丼)
- 彩りを足す(青ネギ・紅生姜・刻みのり・刻みパセリ)
- 温かいものは温かく出す(冷めると見た目も味も落ちる)
→ 「病人食」ではなく 「いつものごはんの延長」 という空気を作るのが、本人の気持ちを軽くします。
Q4. 入れ歯がない人にも合う食事は?
A. 入れ歯がない方には、 「歯ぐきでつぶせる柔らかさ」 が目安です。
- 豆腐
- 茶碗蒸し
- うなぎ(柔らかいもの)
- ひき肉料理
- とろろ・めかぶ・ひきわり納豆
→ 入れ歯がなくても、 これらの食材を組み合わせれば3食まわせます 。
ただし、 栄養バランスが偏りやすい ので、たんぱく質(肉・魚・卵・豆腐)と野菜は意識して入れてください。
Q5. 一日何回くらい食べさせたらいいですか?
A. 基本は 1日3食 ですが、嚥下が悪い方の場合、1回に食べられる量が減ることがあります。
その場合は、 3食+間食(おやつ) で栄養を補う方法もあります。
おやつにおすすめなのは:
- プリン
- ゼリー
- 茶碗蒸し
- バナナ(柔らかい状態のもの)
- ヨーグルト
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→ 「3食しっかり」より、 「少量を回数多く」 のほうが負担が少ない方もいます。本人のペースに合わせてくださいね。
まとめ|「食べてくれた」が、家族の安心になる
ここまで読んでくださって、本当にありがとうございます。
最後に、お伝えしたいことをまとめます。
- 嚥下食は 「病人食」ではない。普段の食事の延長で工夫できる
- 見た目・特別感・まとまる食材 の3軸で考える
- 祖父が食べてくれたのは ネギトロ丼・けんちん汁・中華丼・親子丼・うなぎ丼
- まとまる食材は ひきわり納豆・とろろ・めかぶ
- 肉が好きな方には ひき肉・薄切り・うなぎ で対応
- まずは市販品から試す のが、家族の負担を減らす近道
- おかゆが嫌な人 は、お茶漬け・雑炊・リゾット風に変身させる
正直、嚥下食の正解はひとつじゃありません。 本人の好み・症状・家族の生活 によって、合うレシピは変わります。
だからこそ、 「これは食べてくれた」を見つける作業 を、焦らず続けていってほしいなと思います。
そして、もし 「家族だけで毎日の食事を続けるのが大変」 と感じたら、訪問ST・配食サービス・デイサービスも、長く続けるための大事な選択肢です。
→ 介護施設・配食サービス・在宅サポートの相談は LIFULL介護 で全国のサービスを無料で比較できます。
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ご家族のケアを、無理なく、長く続けるために。 このページが、何かのヒントになればうれしいです。
ご質問やご相談があれば、お問い合わせからどうぞ。
【参考にした出典・ガイドライン】
- 日本摂食嚥下リハビリテーション学会「嚥下調整食分類2021」
- 厚生労働省「介護保険最新情報・口腔機能向上関連通知」
- 農林水産省「スマイルケア食(新しい介護食品)」
- 国立長寿医療研究センター「食事中にむせませんか?」
- LIFULL介護「食事介助の基本」
※本記事は一般情報として提供しており、個別の医療相談に代わるものではありません。気になる症状がある場合は、必ず医師にご相談ください。


